聞こえてますか? 畦道とハイヒール総集編 7 「追憶」episode12

 

聞こえてますか?
昨日の続き…。
去来する堂々巡りの感情は、
後悔と云う大きな波となって
押し寄せて来ます。
それでも僕は、抗い 溺れながらも
却ってくる筈のない
答えのようなものを
今も探しています。

あなたにまつわるエトセトラ。
仲が良かった四姉妹。
家族みんなで行った
海水浴での一齣…。
何故かあなたはカレーを
拵えて海に出向いたそうですね。
きっと張り切ったんでしよう。
タッパーにまとめたそれを
皆に振る舞います。
だけれど
それを食べた者たちは、
軒並みお腹を
壊していったそうですね。
夏の日射しと温度を
読み間違えたあなた。
海水浴も台無しです。
以前 日記にも触れた
我が家のカレーが
缶詰だったこともこれで頷けます。

こんなこともありました。
島での暮らしも板につき始めた頃。
僕も二桁の年齢に達していました。
漁に出た父を待ち岸壁に佇むあなた。
一見美しい光景に見えるけれど
本当に待っていたのは、
父ではありませんでしたね。
彼が獲ってくる渡り蟹が、
お目当てでありました。
湯がくだけのシンプルな
料理方法で食べるそれに
あなたは目がありません。
とくに卵を持つ牝の渡り蟹が
好物でした。
「あたしは、これさえあれば
なぁ〜んもいらん」
【翻訳】
「私は渡り蟹が一番好き」
実に見事な食べっぷり。
綺麗にペロリと平らげます。

順応する天才。
その食に対する飽くなき
探究心だけは、なんちゃって
漁師の女房の名に恥じぬ
ものでありました…続く。

あなたの青春時代に感謝して
また、明日。

いつか 帰る いつでも 会える
時は流れていたのに

君はマーマレード
オレンジ色の想いで
瞳を閉じたらいつも 君に逢える
僕の声を 届けて君の空
あの風にのせて ありがとう
マーマレード…
〜マーマレード/marmaladeより

家族に感謝して
また、明日。

聞こえてますか? 畦道とハイヒール 総集編 6 「駆け落ち」episode11

 

聞こえてますか?
昨日の続き…。
確かにあなたは、
こうと決めると梃子でも
動かない節があり
怒ると手がつけられない
雷のような
ひとでもありました。

中学生のあなたは、
何を間違えたか
堅気とは縁遠い男と恋に落ち
卒業を待たずして駆け落ちを断行
全国を転々渡り歩く…
などと冗談まじりに
話していましたね。

80年代にお茶の間を
席巻した大映ドラマ
赤いシリーズでも扱わない
コッテコテのその逸話も
満更 嘘ではないようです。
おばあちゃん つまりは、
あなたのお母さんが
その時のことを語ってくれました。

当時不良だった父を
よく思っていなかったこと。
決死の想いであなたが
プロポーズされたこと。
それでも追われるような形で
熊本の地を離れ知人の伝手を頼り
神奈川県に一時期
身を寄せていたこと。
そんな逃避行のさなか
僕が生まれたことも…。

言われてみれば、
東京の地下鉄を何故か懐かしく
思う事がありました。
トンネルの明かり取りに
設けられた蛍光灯。
車両の一番前で見ていた
疾走する白い光。
おぼろげな遠い記憶…。
若くして身ごもったあなたは、
どんな思いだったのだろう。
夢もあっただろうに…。
ちゃんと話して来なかった。
会える時に 会ってさえすれば…。

去来する堂々巡りの感情は、
後悔と云う大きな波となって
押し寄せて来ます。
それでも僕は、抗い 溺れながらも
却ってくる筈のない
答えのようなものを
今も探しています…続く。

歩いていこうよ この街を 街を
歩いていこうよ この道を 道を

愛され生を受けた証
生まれてきたのさ
脆く儚い心でも 愛が溢れてる

明日にマケナイテ
強く涙を噛みしめて
辛い時ほど微笑んで
生きていこう この街を
〜明日にマケナイテ1chorusより

産んでくれたことに感謝して
また、明日。

聞こえてますか? 畦道とハイヒール総集編 5「誕生」episode9

聞こえてますか?
昨日の続き…。
2014年12月。
あなたを失いアルバムを整理します。
白いパンタロンに
風になびくことのない金色の髪の毛。
赤いハイヒールを履いた
あなたから少し離れた
五歳の僕を見つけました。

2017年 東京。
あなたを失って三年が経とうと
しています。
若い頃のあなたは、
どんなひとだったのだろう。
青春時代を紐解きます。

since1948〜2014。
世の中は高度経済成長に沸き
男性はリーゼント
女性はロングスカートと云った
ニュールックが流行し
岡晴夫の「憧れのハワイ航路」
笠置シズ子の「東京ブギウギ」
などの歌謡曲がヒットを
飛ばした時代でもありました。

肥後ノ国 八代。
そんな昭和の彩りの中
四姉妹の次女として
稲穂香る収穫の季節に
あなたは誕生しました。
熊本県 第二の都市八代の街は、
日本三大急流のひとつ
球磨川が分流する
三角地帯北部に位置していました。
豊富な水に恵まれていたことから
い草の生産に栄え、且つ
その水の流れの先には
不知火海があり
太刀魚の漁場としても
名を馳せる立地の良い
港町でもありました。

四姉妹の中でも一番小柄で
控えめな子だったと云うあなた。
だけれど、目には見えない
強靭な個性と頑固さを
持ったひとだったと
あなたの一つ違いの妹チコちゃんが
語ってくれました。

👠「姉妹」episode10

聞こえてますか?
こうも続けてくれました。
よくある姉妹ならではの口喧嘩。
電話でちょっとした口論から
はじまったそうでね。
つい姉であることを忘れ
棘のある物言いになってしまった
妹のチコちゃん。
あなたは、 プツンと
切れてしまったそうですね。
「おっとろし~なんねーあんた !
うちは あんたのねーちゃんばい!
そん 口いん 聞き方は 何ねー!
ちぃ~と敬語で喋りなっせ!」
【通訳】
おっとろし~とは、
熊本地方特有の怒った時の口癖
又は威嚇 喧嘩前の狼煙のようなもの
以下割愛↓
「私はあなたの姉なのよ
その口の聞き方は何なの
もう少し姉を敬いなさい」
そう言い終わった後
凄い剣幕で電話を
叩き切られたそうです。
その時のことを
笑いながら話してくれました。

確かにあなたは、
こうと決めると梃子でも
動かない節があり
怒ると手がつけられない
雷のような
ひとでもありました…続く。

あなたの誕生に感謝して
また、明日。

聞こえてますか? 畦道とハイヒール総集編 4 「願い」episode7

 

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そんな暮らしの中で
どうしても
気になる女性が登場します。
幼稚園の先生でした。

犬の大五郎以外興味を抱かない
僕にとって
はじめてのことでした。
いつも笑顔で優しい先生は、
控え目な物腰に
化粧は派手なものではなく
限りなくナチュラルで
爽やかなひとでした。
何より、
黒髪が風になびいています!

僕にとってそれは、
大切なことでした。
アフロばりのスズメの巣のような
髪型のあなたとは大違いです。
そよ風をものともしない
その金色の髪の毛は
針金のようでとても不自然です。
自然体であることが
何よりもあなたに対する
僕の秘かな「願い」でした。
こんなエピソードが
ありましたね。
園の日帰り旅行で長崎の島原に
行った時のこと…。

👠「悲しい目」episode8

聞こえてますか?
1975年 雲仙記念撮影会。
楽しい旅の思い出を写真に残す
大切な儀式の筈でした…。

観光地として賑わいを見せる
長崎 雲仙普賢岳。
ひな壇に立ち並ぶ
親子と引率の先生たち。
嫌な予感はしていました。
写真は苦手です。
魂が抜かれます。
只でさえ笑顔などは作れません。

そんな我が家の事情なと
知る由も無いカメラマンが、
緊張を解そうとします。
無理もありません。
彼は仕事を
全うしているに過ぎません。
だけれど、その言葉が
トドメを刺しました。
「大好きな
お母さんの手を繋いで」
結果、僕を大胆な行動に
向かわせます。
シャッターを切る寸前のところで
あなたの手を僕は
振り解いてしまいました。
あの時のあなたの「悲しい目」を
今でも覚えています…。

2014年12月。
あなたを失い
アルバムを整理します。
白いパンタロンに
風になびくことのない
金色の髪の毛。
赤いハイヒールを履いた
あなたから少し離れた
五歳の僕を見つけました…続く。

君はマーマレード
オレンジ色の想いで
瞳を閉じたらいつも 君に逢える
夏が終わる 八月の夕日
馴染んでた君
僕はいついつまでも 忘れない
〜マーマレード/marmaladeより

セピア色の写真に感謝して
また、明日。

聞こえてますか? 畦道とハイヒール 総集編 3 「変わった子ども」episode5

 

聞こえてますか?
昨日の続き…。
やっぱりあなたは、
この星の人ではないと
そう思い込むことで
その時々をやり過ごしていました。
1975年の春は、僕の嘘から
はじまるのでした…。

あなたは僕に
「変わった子だね」と
よく言っていましたね。
僕から言わせたら
どっちが!です。
何故、他の人と違うのか?
母親に甘えることが、
当たり前とされた
子どもたちの理りの中で
確かに言われてみれば
僕の方も少し
違っている様でした。
ひらひらの服を着て
手を繋ぐことや買い物に
付き合わされることも
とても窮屈で苦手でした。
何故そうなってしまったのか…。
それは、園にあがる前の
環境に原因が
あるのかも知れません。

共働きの両親のもと
僕は、一日の殆んどを
ひとりで過ごしていました。
考えたあなたは、
僕に犬を宛てがいました。
番犬の意味合いも
あったのでしょう。
ひとりでいる事に慣れ
何よりそれが、
当たり前になっていく僕を
憂ての事だったと
今では思えます。
だけれど、あの時の僕には
あなたはの想いに応える術を
持ち合わせてはいませんでした。

そんな生活の中で
唯一心を許したのは、
共に過ごしていた
シェパード犬である大五郎。
彼だけが救いでした。
異なる動物同士とはいえ
垣根を越えた関係に
言葉はいりません。
同時に強い安心感を
彼に見出してもいました。

そして僕は、あなたに対し
子供の特権である「甘え」を
放棄し代わりに「無言」と云う
武器を手に入れました。
「五歳のあんたが〜」と
思うでしょうね。
だけど、小さくとも
そんな感情が芽生えたのは、
確かにあの時でした…。

👠「目にはみえないもの」
episode6

聞こえてますか?
あの時の感情をどう表現すれば
いいのかわかりません。
だけど、今こうして振り返ってみると
それは、園に集う子どもたちと
何ら変わることのない
僕の「甘え方」だったように
思えてなりません。
僕なりに示した唯一の反抗であって
「目にはみえない」
精一杯の愛情表現…。
ただ、それだけのこと
だったのかも知れません。

そんな園の暮らしの中で
どうしても
気になる女性が登場します。
幼稚園の先生でした…続く。

家族に感謝して
また、明日。

聞こえてますか? 畦道とハイヒール 総集編2 「ひとの目」episode3

聞こえてますか?
畦道とハイヒール 総集編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
TPOを完全に度外視した
あなたの出で立ちは、
当時 お茶の間を賑わした
地球外生命体
エイリアンに違いないと
子供ながらに疑ったものでした。

1975年 春 今日は入園式。
黄色い肩掛けポーチと
ひらひらの付いたフリルに
青いドット模様の服を着せられて
はじめての幼稚園に向かいます。
島にも保育園という
施設はありました。
だけど、宇土半島にある
その園に預ける事を
あなたは決めました。
それには、
理由があった様ですね。

車の免許を持たない両親。
島民にとって自動車は、
不可欠なものでした。
我が家では舟だけが頼り。
役所の手続きや、日々の生活に
便利な場所を選ぶのは
無理からぬことでした。
そんな家庭の事情も重なり
僕は、他の子供よりは少ない
一年間という
半島での幼稚園生活を
送ることになりました。

そんな親の思いなど
知る由もなく
僕は只々恐れているのでした。
あなたのことです。
入園式では、
きっと張り切るでしよう…。
日に日にエスカレートする
メイク&ファッション。
五歳になったばかりの僕は、
あなたを見る人の目ばかりを
気にしていました。

👠「嘘」episode4

聞こえてますか?
宇土半島のつま先
三角岳をはじめとした
山々が連なる三角町。
その中のひとつ、
天翔台なる山の裾野に
あなたが決めた幼稚園が
ありました。
僕はそこで更に疑念を
深めてしまいます。
皆一様に手を繋いだ
園児たちがやって来ます。
だけれど、僕の興味は目下
その手を引く保護者の方で
ありました。
何故ならそこへ来る女性は、
僕が思い描くお母さん像
そのものだったからです。

そして僕は、
あなたを見上げるのです。
新型のmake up…。
いつにもまして
顔が光っています。
金と銀の折り紙を散りばめた
ようなそのキラキラは、
「どこの壁に
ぶつけたのですか?」
と聞きたくなる位であります。
港町の春の日差しを
甘く見てはなりません。
照り返しがきついのです。
チカチカしてシュパシュパ
しております。
あなたは、そこでも
完全に浮いていましたね…。

「あれ、誰のお母さん?」
半島に住む見知らぬ子供が
僕に尋ねました…「知らん」。
僕は、直ぐバレる嘘を
つきました。
人と違うということに少なからず
抵抗を感じていたのです。

やっぱりあなたは、
この星の人ではないと
そう思い込むことで
その時々を
やり過ごしていました。
1975年の春は、僕の嘘から
はじまるのでした…続く。

遠き日に感謝して
また、明日。

聞こえてますか? 畦道とハイヒール 総集編 1 「宇宙人」episode1

 

聞こえてますか?
あなたは、
まるで宇宙人のような人でした…。

1975年 肥後ノ国
天草の玄関口
三角港から渡し舟でゆく島。
みかん畑が連なる山々と
北に広がる有明海。
南には、不知火海を臨む
その島のことを人々は
戸馳島と呼んでいます。
そこに住む人たちは、
長閑な自然と寄り添い
暮らしていました。
そんな島の景観に
逆向するかの如く
舟着場までの畦道を
颯爽と闊歩する
ひとりの女性がいました。

今にも折れそうな
真っ赤なハイヒールの靴を
履いたあなたは、
今日も僕の手を引きながら
買い物へ出掛けます。
顔の三倍はあろうか
アフロばりの
そのくるくるパーマは、
「スズメの巣ですか?」
と言いたくなる代物で、
決して風になびくことのない
その金色の髪の毛は
乾いた紙粘土のようでも
ありました…。

👠「告白」episode2

聞こえてますか?
シルビヴィ・バルタンを
好んで聴いていたあなたは、
なんちゃってパリジェンヌ。
メイクひとつにしても
丹念に仕上げます。
何処を真似て何を間違ったのか
何もそこまでしなくても!
と云うくらい塗り重ねた
白いキャンパスに
あなたは、
ルージュを引きました。
まるで、まんが日本昔ばなし
に登場する
お公家さまのようです。
幼い頃の僕は、
そんなあなたが少しいやでした…。
島の住民にそのような
風変わりな女性は、
ひとりもいませんでした。

TPOを完全に度外視した
あなたの出で立ちは、
当時 お茶の間を賑わした
地球外生命体
エイリアンに違いないと
子供ながらに
疑ったものでした…続く。

二十六歳のあなたに感謝して
また、明日。

聞こえてますか? あなたに捧ぐ…。 眠り/nemuri

 

聞こえてますか?
「まぁ〜まぁ〜ねぇ〜」
主治医から一時退院を許されて
我が家に帰って来たあなたは、
そう 言っていましたね。

あなたの退院を祝い。
友人 親戚 一同が集まる中で、
僕は『眠り』と云う曲を歌いました。
皆、一頻り 飲んで 食べて 笑った
一夜限りの『宴』
その賑やかさにあなたは、
ついつい夜更かしをして
しまいましたね…。

「あの曲を聴かせて」
再び体調を崩し横になっていた
あなたの声がします。
そして、
僕の手をかりて
ベッドから起き上がりました。
それから僕は、
携帯のイヤホンを
あなたの耳にあてるのです。
「もう一回…」
あなたは、
まだ未完成だったその曲を
病室の窓の外を眺めながら
ずっと聴いていました…。

ひと夢に感謝して
また、明日。

聞こえてますか? あなたに捧ぐ…。マーマレード/marmalade 1

聞こえてますか?
あなた、はいつも
出迎えてくれましたね。
家の窓から舟が
見えるものだから。
父が漁から帰って来る時。
僕が学校から帰って来る時。
それから、
送り出してもくれました。
中学を卒業し家を出た時。
上京する時。
そして、病院の踊り場でも…。
見えなくなるまで手を
振っていましたね。
小さな体から伸びた
その細い腕で…。
あなたらしい
その独創的な手の振り方で…。

あなたが好きだった
シルヴィ・バルタンを
聴きながら車を走らせます。

療養を送る市内の病院まで
戸馳大橋を車で渡たり1時間30分。
熊本の空は、
ビルに切り取られた
東京のそれよりも広いから
帯山方面に建つ
電波塔がよく見えます。
山を越えたら
それを目指して車を走らせます。
不安な夜を過ごすあなたは、
僕と同じものを
その窓から見ていたんだと
今も思っています…。

🎵
遠い夏の日 君は風を集めて
海を渡る人
いつも 見つめていたね
茜色の空
時を止めたのは 何故

君はマーマレード
オレンジ色の想いで
瞳を閉じたらいつも
君に会える
夏が終わる 八月の夕日
馴染んでた君
僕はいつ いつまでも
忘れない

2014年12月17日
あれから、四年の今日に…。
あなたに感謝して
また、明日。

🌙マーマレード/marmalade 2

聞こえてますか?
子供には分かりませんでした。
何で、牛乳を飲まなくては
ならないのか。
どうして、野菜を勧めるのか。
何ゆえ、我が家の献立は
骨があって食べにくい
魚が多いのか。
どうして、何で?

1、家庭の事情
2、魚はタダ
3、父の好み

本当は、ハンバーグが
食べたかった…。
🎵
街を離れて過ぎた 季節の中で
変わらないものは 君の温かい心
「お腹空いてない?」
電話の向こうの 声

君はマーマレード
オレンジ色の想いで
瞳を閉じたら
いつも 君に会える
輝いてた 飾らない笑顔
心の中に 君が
いついつまでも いるから
歌詞 マーマレードより

おふくろに感謝して
また、明日。

男女7人高円寺 play back 最終話「空回りの男」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
こんなエピソードがあります。
それは、僕たち同級生が
上京して二年が過ぎた頃の話…。
就職組の彼が、男女7人集まる中で
「おら〜仕事ば〜やむるっ」
【翻訳】
*俺は、仕事を辞めるよ
と言ったことから始まります。

いつもひょげ’倒す空回りの男。
この時ばかりは、
深妙な面持ちで絞りだすような
声で言いました。
「おらぁ〜
仕事ばやむるっ…大学出に
どがんしたっちゃ~勝たん…」
【翻訳】
*僕は仕事を辞めるよ
大学出身者にどうしても勝てない
続けて…
「だけん おらぁ〜新聞配達
したっちゃ 大学受験するっ」
*新聞配達しながらでも
大学受験をするよ

それは、六畳一間の
高円寺のアパートで
彼が発した決意表明でした。
一瞬 テレビのブラウン管の
静止画面にノイズが走る
衝撃を覚えました。
彼の願いは、到底
報われる事のない
無謀なものでした…。

スポンサーもなしに
新聞配達の稼ぎだけで
どれだけやれるのか…。
生活 試験 その後の学費は?
何より親へのしおくりは
どうする…?
同級生たちは、口々に
反対の声をあげました。

東京と田舎である
熊本とでは貨幣価値 即ち
一万円は決して比例しない。
消費のスピードが
明らかに違うのです。
僕たち上京して来た者は、
先ずそれをこの東京で
思い知らされるのでした。
その上 受験勉強する時間を
どう確保するのか…
再就職でさえ大変な時代
課題は山積み…。
同級生たちの反対は、
無理もない事でした。
それは、空回りの男に対する
肌で感じた本物の心配…
愛情表現に
他ならないものでした。

だけれど、男女7人の中に
賛成に回る者がひとり…。
僕でした。なぜなら、
彼が東京に抱く
コンプレックスの源が
そこにあるように
思えたからです。
第一 彼が言った時点で考えを
曲げない事を知っていたし
何より、そんな生き方が
僕は好きでした。

それからの
彼のガマだし(頑張り)は、
他に類を見ないもので
ありました。
怒涛のような不安と困難の中で
いつ勉強をしているのだろうと
思うくらい彼は働きました。
いつ寝ているのか
分からないくらい学業に
励む彼の姿を僕たちは
見ていました。

そして二年後…。
朝夕の新聞配達 受験勉強を
やり抜いた彼は、見事
大学に受かって見せました。
感動を禁じ得ません。
心から凄いと思いました。

2016年 熊本震災…。
同窓会チャリティーライブも
彼の計らいから実現しました。
『空回りの男』は絶好調❗️
みんなを楽しませようと
ひょげ’倒します。
失笑です。愚かです。迷惑です。
相変わらず
彼のハートは強く そして 、
尊いものでありました…完。

追伸
花の男へ…
おふくろに蘭の花をありがとう。
優しい男へ…
あの日、駆けつけてくれて
ありがとう。
りぃ~子へ…
2017.7.21ライブに来てくれて
ありがとう。
空回りの男へ…
あの日、泣いてくれて
ありがとう。
優しい声の人と厄介な彼女は
幸せな家庭を築いていると
聞きいています。
いつまでも幸せに…。

生徒会長 やっちん なお
ゆみっぺ かめちんへ…
2018年みなと祭りライブの段取り
心遣いをありがとう。
三角中学同級生
いつか また会える日を願い
🍎男女7人高円寺に感謝して
また、明日。