for you…rain season 13話「ダイヤルM」中編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そんなことに時間を割きながら
今日もMの電話番号を
聞きだせない異様な髪型軍団の
夜は過ぎて行きました。
「ダイヤルM」
ミッション イン ポッシブルの
遂行までには、暫くの時間と
少しばかりの勇気を
必要とするのでした。

チャンスは突然に!
いつものように
一頻り呑んだ我ら軍団は、
お会計に向かいます。
そのレジ打ち つまりは、
勘定場にMの姿がありました。
皆一様に顔を見合わせ
絶好の機会とばかりに
僕の顔を伺っております。
異様な風貌の割に
あがり症のアフリカーナ。
人間…意識すると
どうもにもいけません。
ゼンマイ仕掛けの機会的な
手足の動作と胸を押さえ
付けられたような圧迫感。

そんな僕は、
自然に財布を取り出し
さりげなく支払いを
済ませられるのでしょうか?
それだけでも
高い壁であるようです。
そして、最大のミッション
「ダイヤルM」即ち
彼女の電話番号を聞きだす事が
果たして出来るので
ありましょうか❗️…続く。

チャンスに感謝して
また、明日。

for you…rain season 12話「ダイヤルM」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そんな僕の最初のMissionは、
ダイヤルMをまわせ!ならぬ
「Mの電話番号を聞きだせ!」
でありました。

【M_1電話番号GET作戦…】
携帯電話並びにスマートフォン
など無い時代。
当然、現代のようなSNSなど
発展を遂げてはおらず
「LINE教えて〜」的な
軽い乗りで聞き出せる
代物ではありません。
自宅なのです。固定式です。
東京03なのであります。
全てはNTTが
支配していたのです!
それは其れは、
高いハードルでありました。

皆一様に口を
揃えて言いました。
「彼女は無理だよ…
…違い過ぎる」続けて
揶揄うように
メンバーのひとり
巨漢の持ち主が、
図太い声をあげながら
「その髪型じゃね〜」と
笑います。モヒカンに
言われたくはありません。

次にスキンヘッドの
ハードロッカーが、
「ファッションのセンスがね」
などと吐かします。
夏でもライダースの革ジャンを
着ている男に
言われたくはありません。
僕にしてみたら
その肩にあしらった
金属の突起物!
「それで何を…
刺したいのですか?」と
言いたくなるくらいです。
暑苦しくてなりません。
却下です。

そして、ダンサーである
ドレッドヘアーの彼。
「裸ですか?」と
訪ねたいくらい
服を着ているにも拘らず
肌の露出度が何気に多い
筋肉マンが、
トドメの言葉を放ちました。
「先ずは電話番号だね〜」
大当たり、正解です。
だけれど、
当たり前と云えば当たり前。
どう聞き出すかが
肝心なのです。

そんなことに時間を
割きながら今日も
Mの電話番号を聞きだせない
異様な髪型軍団の夜は
過ぎて行きました。
「ダイヤルM」
ミッション イン ポッシブルの
遂行までには、暫くの時間と
少しばかりの勇気を
必要とするのでした…続く。

異様な髪型軍団に感謝して
また、明日。

for you…rain season 11話「Mission」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
「打ち上げ何処に行く?」
の号令一下!リハを終え
我らが向った先は、紛れもなく
強いアルコールが多数存在する
メキシコ料理店を置いて
他に無いのでありました…。

国道246号線三宿の交差点。
進行方向を三軒茶屋とし
左に曲がれば
彼女Mが住む下馬方面に
行くことが出来ます。
その道路沿いの並木道には、
三宿の街を象徴するかの
ように お洒落な店舗が
軒を連ね賑わいを見せており
ZESTの姉妹店でもある
イタリア料理店ラ・ボエムも
その並びにありました。
後にそこは、もう一つの
想いでの場となります。

だけれど、そこに至るまでに
何度もの試練を乗り越えなく
てはなりませんでした…。
そんな事など知る由もない
憐れなアフリカーナは、
自身の音楽活動に邁進し
その身に付ける衣装も
エスカレートする一方で
どんどんと薄汚れて
行くのでした…。

あの頃を振り返るたびに
思うのです。
上京して数年…。
誰もやっていない新しい音楽を!
それを目指して
しゃかりきだった時代。
そんな自分を俯瞰で見る余裕が
無かったようです。
少しだけ思い込みの強い僕は、
音楽と同様 三宿のMにも
のめり込んでいく事になります。
こっぴどく振られ
これでもかってくらいに
叩きのめされることも知らずに…。

そんな僕の最初のMissionは、
ダイヤルMをまわせ!ならぬ
「Mの電話番号を聞きだせ!」
でありました…続く。

夢に感謝して
また、明日。

for you…spring 10話「M脳」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
後日スタジオに集まった
メンバーのひとり
モヒカン頭の彼が言うのです。
巨漢にその図太い声を
あげながら
「あの水を持って
来たのはあの子だよ」
続けて「ひとりぼっちじゃ
可愛そうだから」と
言っていた事も覚えており
ニヤリとしたその唇に
好奇心を滲ませて
話してくれるのでした。
ポツンと置かれた
「コップ一杯の水」
それは、紛れもなく彼女
Mのことでした…。

それを聞いた時の感情を
どう表現すれば良いのでしょう…。
その後発表される
ハリウッド映画
ブラッド・ピット主演の
【ジョーブラックによろしく】
大切な台詞として
散りばめられた言葉…。
「稲妻に打たれる」
突然やって来る熱い感情
それは痛みすらも帯びた
激しい心の動き。
どうやら、それなるものに
僕も打たれたようです。

元来単純に
構成された僕の脳
なんちゃってアフリカーナは、
そんな些細なことに
異常な反応を示すようで…
リハーサルを終える迄もなく
すっかりM脳に侵食されて
いるのでした。

「打ち上げ何処に行く?」の
号令一下!リハを終え
我らが向った先は、紛れもなく
強いアルコールが多数存在する
メキシコ料理店を置いて
他に無いのでありました…二章
rain seasonへと続く。

新しい恋に感謝して
また、明日。

for you…spring 9話「コップ一杯の水」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
だけれど、結果は明白。
その顛末 酒に飲まれた僕は、
深い眠りにつくのでした。

「ここはどこ?私は誰?」
ある種テレビドラマのような
シチュエーション…。
最初 目に飛び込んで
来たものは、
天上高く吊り下げられた
三枚翼のスプリンクラー。
それはその夜の役目を終えて
静かに停止していました。
その次に目にしたものは、
テーブルにポツンと置かれた
「コップ一杯の水」…。
漸く意識を取り戻した僕は、
このお店の閉店を知り
事の真相をスタッフから
教えられるのです。

酔った僕がメンバーから
揺り動かされても
起きなかったこと…。
諦めた彼らが僕を置き去りに
笑いながら
帰って行ったこと…。
それから、
喉の渇きを覚えた僕は
ポツンと置かれた
「コップ一杯の水」を
飲み干し勘定を済ませ
メキシコ料理店を
後にするのでした。

あの頃の我ら、即ち
異様な姿形をした男たちに
とって酔っ払い記憶をなくすの
なんて珍しい事ではなく
持ちまわりのバップ(遊び)
の様なものでした。
今日は、誰を潰す!
それがメンバーの理り…。
潰れるのが主流で
あったのです。
ただ、気遣いに
コップ一杯の水を置いていく…
なんて芸風を
彼らが持ち合わせて
いるとは思えません。

後日スタジオに集まった
メンバーのひとり
モヒカン頭の彼が言うのです。
巨漢にその図太い声を
あげながら
「あの水を持って
来たのはあの子だよ」
続けて「ひとりぼっちじゃ
可愛そうだから」と
言っていた事も覚えており
ニヤリとしたその唇に
好奇心を滲ませて
話してくれるのでした。
ポツンと置かれた
「コップ一杯の水」
それは、紛れもなく彼女
Mのことでした…続く。

その優しさに感謝して
また、明日。

for you…spring 8話 「コップ一杯の水」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
凹型に陣取る
ドレッドヘアーに三つ編み、
スキンヘッドにモヒカン
そして2ブロック
ちょんまげ頭の面々…。
一般的では無い
異様な髪型の集団。
そんな我らにも
気さくに対応してくれる
ショートカット女子大生M。
最初の印象は、明るくて
感じのいい
お嬢さんでありました。

さて、
「コップ一杯の水」の話。
その当時から
大して酒が強いわけでも
ないのに飲み慣れぬ
度数の高い
アルコールを喰らいます。
愚かです。
女性には理解不能な事柄が
オトコ社会にはあるのです。
闘いなのです。
酒の呑みっぷりを
競ったりする生き物なのです。
残念です。

一様座長である僕は、
メンバーを楽しませようと
しゃかりきであります。
弱い癖に一気飲みなどをして
皆を引っ張ります。
旗ふりの役割りなのか
宿命と云うべきか…。
つまらない飲み会では
次が無いのです。
だけれど、
結果は明白。その顛末
酒に飲まれた僕は、深い眠りに
つくのでした…続く。

アルコールに感謝して
また、明日。

for you…spring 7話「お嬢様」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
椋の木を使った贅沢な造りの
一本カウンターは、
荒削り風に施され職人の気概を
感じさせてくれます。
手作りで作られた
指揮台のようなそれは、
奥までと伸びていて
この店の象徴で
ZESTの顔でありました。

僕は、凹型の二階席を好み
ソロで活動していた事もあり
そこで労いを込めて
手伝ってくれるメンバーと
一緒に酒を飲むのでした。
なかなかどうして…。
いつも笑顔で客に
対応するMは、僕が知らない
世界の人のようでした。
山の手の人と云うべきか…。
無垢で清楚を纏ったような
身の振る舞い、育ちの良さ…。
一言でいえば、
絵に描いたような
「お嬢様」でありました。

凹型の席に陣取る
ドレッドヘアーに三つ編み、
スキンヘッドとモヒカン
そして2ブロック
ちょんまげ頭の面々…。
一般的では無い
異様な髪型の集団。
そんな我らにも
気さくに対応してくれる
ショートカットの女子大生M。
最初の印象は、
明るくて感じのいい
お嬢さんでありました…続く。

お嬢様に感謝して
また、明日。

for you…spring 6話「三宿ZEST」後編

聞こえますか?
昨日の続き…。
うす汚れた波型のトタンは、
このお洒落な街にも
さり気なく溶け込んで
見せているのでした。

中にお邪魔すれば…
吹き抜けの大開口。
見下ろすように建てられた
凹型の二階は広く
この店内を一望出来る
場所であり吊り下げられた
スプリンクラーは優雅に
ゆっくりと廻っておりました。
階段を上った入り口の
右手にはテラス席があり
夜風を愉しむのに
もってこいの酒飲み場で
中心部の大広場のそこは、
オーケストラの楽団が演奏する
オペラ劇場のような
雰囲気すら醸し出しております。

椋の木を使った贅沢な造りの
一本カウンターは、
荒削り風に施され職人の気概を
感じさせてくれます。
手作りで作られた
指揮台のようなそれは、
奥までと伸びており
この店の象徴でありZESTの
顔でもありました…続く。

今は無き三宿ZESTに感謝して
また、明日。

for you…spring 5話「三宿ZEST」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
Mとの出会いも
そんな過渡期の話。
四つ年下の彼女との
お付き合いに至るまでの
きっかけは「コップ一杯の水」
でありました。

東京は池尻大橋。その昔、
龍池と呼ばれたその尻尾に
リハーサルスタジオが
ありました。なんちゃって
アフリカンの僕は、
そのスタジオを砦とし
稽古を終えれば決まって
その龍池の中心部
三宿のメキシコ料理店へと
足を運ぶのでした。

賑わいを見せていたZEST。
田舎育ちの僕にとって
正にそこはテーマパーク。
映画のシーンに出て来ても
可笑しくはない建物であり
ブリキで作られた外壁は、
手抜き工事と思わせる演出で…。
ザックリとビスで
撃ち抜かれたそれは
細部までしっかりと
計算された斬新なデザインで
あったのです。
うす汚れた波型のトタンは、
このお洒落な街にも
さり気なく溶け込んで
見せているのでした…続く。

三宿の酒場に感謝して
また、明日。

for you…spring 4話「アフリカーナ」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
これより先は、
少しばかり時間を戻して
Mとの出会いから
どうしても洗えない髪と
その仲間たちの
話を交えながら綴って
行きたいと思います。

若気の至りとは
良く言ったもので
少しだけ思い込みの強い僕は、
心底アフリカンにのめり込み
打楽器と歌の世界を
追求していました。
決してアフリカーナには
なれないものを…。
肥後ノ国 港町である三角は
戸馳島の出身であります。
育って来た環境や
リズムが違うのです。

田舎の友人にしたらこうです。
「わら〜何しよっとや
親が泣くぞ!東京に
魂売って染まったつや!」
【翻訳】
「身の程を知りなさい…
東京に魂売った
男など友達じゃない!
親が泣いているよ」
⬆︎こんな感じであります。
髪を洗えない
残念なアフリカーナ。
それを思い知るに至るに
暫しの時が必要でありました。

Mとの出会いも
そんな袋小路に迷い込んだ
僕の過渡期の話。
四つ年下の彼女との
お付き合いに至るまでの
きっかけは「コップ一杯の水」
でありました…続く。

その水に感謝して
また、明日。