厚木のトラック野郎 全11話その2 「ポンコツワーゲン」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
「もーよか~もうせーん!」
翻訳
(もういい もう知らない)
と言いながら諦めたように
その肩を落とすのでした。

1991年当時の僕は、
新宿 歌舞伎町の
CLUB歌手を生業とし
食い扶持を得ていました。
深夜1時からの4ステージ。
店舗から出される残飯を
カラスが突っつく頃に
仕事を終えて
居候先である厚木の
愛川町へと戻るのです。
一番星がいうところの
ポンコツワーゲンに
乗り込んだ僕は、
眠らない街
歌舞伎町を後にしました。

二時間をかけた
国道246の帰り道。
多少の眠気はあるものの
僕には大切な時間
でもありました。
新しい曲を考えたり
鼻歌を誰に
気兼ねすることなく
口遊むことだって出来ます。
それから僕は、
八王子バイパスを経由して
脇道に入ります。
敢えて遠回りの
山道を選ぶのは、
相模川に架けられた
小倉橋を通りたいからです。
何よりも
その車窓から見える
景色が好きでした。

初夏の風は、
冷房の具合が悪い
ポンコツワーゲンには
有難い涼しさで
その川面に映る
針を散りばめたような
キラキラは、
都会の喧騒を
忘れさせるものでした。
そして
その柔らかい風に
揺れる水草は、
新しい季節の到来を
待ちわびるかのように
緑色の葉を光の方へと
強く伸ばしていました。
仕事終わりの帰り道は、
束の間のひと時と
爽やかな気持ちを
もたらしてくれる
大切なものでした…続く。

新しい季節の到来に感謝して
また、明日。

 

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