厚木のトラック野郎 全11の7 「長い夜」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
あの日の彼は、
本物のトラック野郎に
なっていました。

一軒終わればまた一軒。
鞍替えした場末のスナックは、
時代から取り残された
ような佇まい。
僕らの父親の世代から
活躍していたであろう
年季の入ったカウンターは、
店の奥までとのびていて
木製で造られたそれは、
店構えの象徴でもあり
拭いきれないグラスの
水跡が味でした。
赤いベルベット調の生地を
贅沢にあしらったボックス席は、
何年にも渡って吸い続けた
帰りたくない男達の
汗と涙の歴史を
物語っているかのように
その店を縁取っていました。

一見廃れたようなそれを
一番星は、風情と呼びました。
小洒落たものに
異常な拒否反応を示す彼に
都会派なものなど通用しません。
昔ながらのそれを受け継ぐもの…。
例えていうならば、
赤提灯と肴は
炙ったイカであります。

それが揃えばあとは唄。
カラオケをこよなく愛する
彼の十八番は、
松山千春の長い夜でありました。
なかなかどうして
ロングトーンはお手のもの。
うまいものです。
気をよくした彼は更に
喉を鳴らし歌い続けます。
そのあとも、
馴染みとするお店を
何軒か梯子し
朝方まで飲み明かします。
それが一番星のパターン
彼の流儀なのでありました…続く。

時代遅れの男たちに感謝して
また、明日。

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