汚れなき愛を信じて 2話 「夏の香り」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
微かに捉えることの出来る
遠くに霞む新宿高層ビル群。
聖蹟桜ヶ丘の街並みが
一望出来る場所。
厚木 愛川の街から
そこへ移って来たのは、
1992年の初夏のことでした。

丘に上がった僕らは、
洋風な家が建ち並ぶ
ロータリーをぐるりと回り
その草臥れた中古車を
アパートの近くの
駐車場に止めました。
エンジンを切っても尚
唸り声を上げる
ワーゲンのボンネットに
駅前のスーパーで
仕入れた食材を一旦置き
それらを抱えて
僕らは歩き出しました。

駐車場からアパートまでに
小さな畑が並んでいて
名も知れない花たちが
夏の訪れを
待ちわびるかのように
その風に揺れていました。
陽射しがまだ柔らかい季節。
彼女の長い黒髪が
太陽に反射して
キラキラとしていました。

長身の彼女は、
踵のある靴を履けば
明らかに僕の背丈を上回り
気遣いからか
今日もペッタンコの
靴を履いています。
二階建ての木造建築。
当時では珍しい屋根裏のある
アパートの鍵を
僕らは開けました…続く。

新しい季節に感謝して
また、明日。

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