汚れなき愛を信じて 16話 「哀しい予感」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
気分を良くした彼女が
それから向った先は、
その銭湯の向かいにある
仲良しと書かれた看板の
昔ながらのもんじゃ屋さん。
彼女は生粋の江戸っ子で
ありました。

風呂上がりには、
瓶ビールと摘み。
海鮮バーターと
ねぎバーターが
彼女のお好みでした。
そして締めにはもんじゃ。
これが僕らの定番でありました。

生まれて初めて
もんじゃを食べたのが
ここでした。
見た目のその
独特な装いに反して
小さなステンレス製のへらを
使って食べるそれは、
とても美味しいものでした。
彼女は先ず円を描くように
その食材で土手を作り
仕上げにベビースターラーメン
(乾燥お菓子タイプ)を潰し
パラパラとふりかけました。
コレがまた、
この江戸っ子フードの味を
より良く際立たせ
芯を少しだけ残したそれは、
もんじゃを
完璧なものにしました。

風呂上がりのほろ酔いは、
二人の距離をぐっと
近くするようです。
だけれど僕は、
何処かで不安を
感じてもいました。
考えてみれば、
僕は彼女に教えられて
ばかりでいたのです。
それはとても嬉しいこと
なのだけれど…。

赤いのれんをくぐって
店を出た僕らは、
家路をたどります。
彼女が夜風を愉しむように
歩き出しました。
僕は先を行く彼女を
追いかけているのでした…続く。

思い出の味に感謝して
また、明日。

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