汚れなき愛を信じて 17話 「哀しい予感」中編

昨日の続き…。
赤いのれんをくぐって
店を出た僕らは、
家路をたどります。
彼女が夜風を愉しむように
歩き出しました。
僕は先を行く彼女を
追いかけているのでした。

彼女がお金を支払う時に
小銭を探す仕草を見た
記憶がありません。
大抵が札でありました。
とはいえ大雑把な性格
でもないのです。

月末ともなれば、
勤務先のCLUBから
支払われる対価
彼女はそれを「お給料」と
呼んでいました。
たわいもないことだけれど
「お」を使うだけでも
印象はだいぶん違うものです。
彼女はそのお金という価値
即ち怖さを知っているかの
ようでした。

女手一つで育ててくれた
お母さんを見ていたから
なのかも知れません。
自分が投資に値すると
決めたものには、惜しみなく
その価値を投じました。
それは、
彼女の心に触れるもの
に限っていました。
だから彼女がその価値を
大切にしていることが
僕には分かるのです。
その言葉の端々に出てくる
彼女の謙虚さが
物語っていました。
そんな彼女の姿勢の良さが
僕は好きでした。
でも…。

富を持つ者と持たない者。
夢しか持ち合わせていない
男は悩みます。
価値はお金では測れないと
分かっていながらも
現実は厄介でありました。
時は考える隙を
与えてはくれません。
時は僕を待っては
くれませんでした…続く。

その価値に感謝して
また、明日。

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