for you…summer 27話「夏の虫」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
眠りから目覚めて
一番に想い浮かぶ顔は
その人にとって
一番大切なひと…。
それは下馬散歩のはじまりから
より強く僕の心を
支配してゆくのでした。

夏の虫たちは、
まるで疲れを知らないように
午後の日差しが傾いても
喧しく鳴いていました。
二階にある寝室から
リビングに降りて
テレビのリモコンを探します。
それから、冷蔵庫の中の
ミネラルウォーターを取り出し
庭に面した窓を開けました。
点けっぱなしにした
テレビの音と夏を象徴とする
その鳴き声は、
ステレオタイプとなって
この川辺の家に響き渡りました。
起き抜けの僕には騒音以外の
何ものでもありません。

眠りから目覚めて
一番に想い浮かぶ顔は
その人にとって一番大切なひと…。

庭の乾き切った土を眺めながら
ミネラルを飲み干しました。
花に水をやらなきゃと
ぼんやり思いながらも
目覚めたばかりの意識は
彼女だけの物になっています。

あれから、Mと会えない
日が続いていました。
時間が合わなかったり、
リハーサル終わりメンバーと
飲みに行っても休みだったり…。
昨日、思い切って彼女の家に
電話をしてみたけれど
案の定 留守でした。

「避けられてるのかな…」
テレビの音と虫の声は、
そんな意識の中で薄れて行き
やがてそれは
弱くなってゆくのでした…続く。

夏の声に感謝して
また、明日。

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