for you…summer 37話「Mの嘘」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
Mの赤い唇にまた、
女の笑みが零れました。
非の打ち所のない
六本木ダンデー。
張り合える器量もない癖に
夢しか持ち合わせていない
男は最後に呟くのです。
「靴下を履きなさい…」
それは僕の、彼に対する
唯一の上から目線…。
負け惜しみにも似た
哀しい「心の声」
なのでありました…。

良いことも悪いことも
Mと僕との間に何かが
起きる時には、いつも
雨が降っていました。
あの日の夜もそうでした。
銀色の月を遮る雨雲は、
そのひかりを奪って
僕の足元を狂わせるのでした…。

強い雨と風の注意を促していた
夕方の情報番組。
予報通りパラパラと降り出した
それは、草臥れた中古車の
フロントガラスに
小さな水玉を作っていました。

その日の僕は、
Mとの約束が無くなった為に
池尻大橋にある
スタジオ練習を終えて
そのまま勤め先の
新宿歌舞伎町に向かう筈でした。
急な同級生からの連絡で
断れなかったと言っていた彼女。
だけどそれは、
「Mの嘘」でした…続く。

その経験に感謝して
また、明日。

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