for you…summer 38話「Mの嘘」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
その日の僕は、Mとの約束が
無くなった為に
池尻大橋にあるスタジオ練習を
終えてそのまま勤め先の
新宿歌舞伎町に向かう筈でした。
急な同級生からの連絡で
断れなかったと言っていた彼女。
だけどそれは、
「Mの嘘」でした…。

スタジオの裏手にある
駐車場から細長い路地を抜け
国道246号線に出ようとした
信号待ち。反対車線に
見覚えのある折りたたみ式の
赤い傘を見つけました。
黒塗りの高級車に乗り込む
ショートカットの女性…。
いくら雨の中であっても
彼女の姿を見間違う筈が
ありません。
紛れもなくMでした。
運転手の男性らしき人物は、
どうやら同級生では
ないようです。

考える余地を与えては
くれない瞬間的な現象。
その黒塗りのセダンを
目で追いながら僕の体は
勝手に動き出すのです。
草臥れた中古車の
無茶なUターン…。
だけれど、
ハンドルを回し切る頃に
Mを乗せた車を
見失ってしまうのでした…。

不安な気持ちは、
いつだって僕の想像を
裏切ってはくれません。
翌朝 彼女の家に
電話をかけてMがまだ
帰っていない事を知ります。

悲しい情報を伝達する
電波信号機のそれは、
この手のひらから零れ落ち
何も考えられなくなった僕は
阿呆の如く焦点の合わない
空間的なものを只々
見つめているのでした…続く。

あの日の想いでに感謝して
また、明日。

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