for you…summer 39話「夏の嵐」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
悲しい情報を伝達する
電波信号機のそれは、
この手のひらから零れ落ち
何も考えられなくなった僕は
阿呆の如く焦点の合わない
空間的なものを只々見つめて
いるのでした…。

昨夜から降り続く雨は、
明け方から勢いを増して
東京上空の色を
変えて行きました。
庭に面した窓は、
危うい金切り声を上げています。
夏の嵐に煽られたそれは、
僕の心をも激しく乱して
ゆくのでした。

【回想】
お台場ドライブを愉しんだ後…。
どちらからとも無く切り出した
これから…。
いつもより何処と無く
はしゃいでいる様子だったMも
もうひとつの橋を渡る時には
沈黙を守っていました。
東京湾岸道路 国道357号線…。
その荒川河口橋から見える
葛西臨海公園の観覧車。
雨に煙るその灯りを眺めながら…。
31話「夏の夜の夢 後編」より

あの時彼女は、
何を思っていたのだろう…。
不自然なほどに
陽気に振る舞っていたM。
橋の上から見つめていたもの…
それはいったい…。

さっきまで手にしていた
電話の受話器は、
板張りに転がったまま
その居場所を失い
不通音を鳴らし続けています。
それは、彼女との
「おしまい」を知らせる
メッセージであるかのように
何度も何度も
繰り返しているのでした…続く。

遠い夏の日に感謝して
また、明日。

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