for you…summer
41話「この静寂に
雨音だけを響かせて」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
雨色の夜は、まるで
匿うかのような優しさで
彼女の横顔に
影を落としているのでした。

Mの声は、言葉の玉となり
水面に零れ落ちる雨粒のように
ポトン ポトンと僕の心に
波紋を拡げて行きました。
ひとつひとつを
確かめるように…悼むように…
そして彼女が
最後に紡いだそれは、
「あなたは嫌いじゃないけれど
きっと好きにはなれない」

【回想】
まだ、
乾き切れていない髪の毛と
目を閉じたままのMは
丸まった子猫の体勢で
僕の腕の中に小さく
収まっています。
本当に眠っているのかも
知れません。
雨の匂いを含んだ夏の夜…。
僕はもう一度
彼女をきつく抱きしめるのです。
夢じゃないことを
確かめるように…。
31話「夏の夜の夢 後編」より

夜の雨は、湿度を変えながら
フロントガラスを白くして
不規則に落ちてゆきました。
この静寂に雨音だけを響かせて…
最終章autumnへと…続く。

雨音に感謝して
また、明日。

 

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