for you…autumn 42話「音符のないメロディー」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
夜の雨は、湿度を変えながら
フロントガラスを白くして
不規則に落ちて行きました。
この静寂に雨音だけを響かせて…。

気づいていたのかも
知れません。
こうなることを…。
彼女の眼差しは、
僕の手には届かない
遠くの何かを
見ているようでしたから…。

【回想1】
お台場ドライブを愉しんだ後…。
どちらからとも無く切り出した
これから…。
いつもより何処と無く
はしゃいでいる様子だったMも
もうひとつの橋を渡る時には、
沈黙を守っていました。
東京湾岸道路 国道357号線。
その荒川河口橋から見える
葛西臨海公園の観覧車。
雨に煙るその灯りを眺めながら…。
31話「夏の夜の夢」後編より

分かった気でいたMのこと。
僕は、女が持つ
もうひとつの顔を
見ていなかったようです。

【回想2】
彼が、二本目のワインを
開けました。
今夜のMは、酒の量が少し
過ぎるようです。
赤い葡萄酒に新しいグラス。
ワイングラスを挟む彼の指に
彼女の視線が注がれました…。
35話「六本木セレナーデ」
中編より

お嬢様育ちとはいえ
ひとりの女…。
白か黒かの男たちの
シンプルな世界とは異なり
女には、計り知れない
複雑なものを心に忍ばせて
いるようです。
時と場合によってそれは、
鋭利な刃物に姿を変えて
心の臓をひと突きにも
するのです。

女とは、
その懐に隠し持つ凶器で
愛ゆえに 男を歓ばせもし
愛ゆえに 殺すことも厭わない
生き物なのかも知れません…。

決してラジカセでは
聴くことの出来ない旋律…。
Mとそして、 あの人…だけが
奏でる音符のないメロディー。
恋焦がれた者達だけに
漂う哀愁に僕は強烈な
嫉妬を覚えたのです。
それはきっと、
僕など遠く及ばない愛の歌に
違いないのでした…続く。

愛の歌に感謝して
また、明日。

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