for you…autumn 48話「ZEST再び…」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
死をも恐れない行動と
燃え尽きても構わない覚悟の
恋はとても似ている…。
僕は2度目の命がけの階段を
のぼるのでした。

テラス席に寄り添う
恋人たちは、夜風にあたりながら
テーブルの上に彩られた
料理とお酒を愉しんでいました。
花束に忍ばせたCDを
今一度確認した僕は、
その脇を通り店内に入るのです。
そして、オーダをとる
Mの姿を認めました。
一呼吸を置いた刹那
僕の視界は、動くもの全てを
スローモーションに代えて
踏み出した一歩が
スターターとなり
この舞台の幕を上げるのでした。

【回想】
中にお邪魔すれば…
吹き抜けの大開口。
見下ろすように建てられた
凹型の二階は広く
この店内を一望出来る
場所であり吊り下げられた
スプリンクラーは優雅に
ゆっくりと廻っておりました。
階段を上った入り口の
右手には、テラス席があり
夜風を愉しむのに
もってこいの酒飲み場で
中心部の大広場のそこは、
オーケストラの楽団が演奏する
オペラ劇場のような
雰囲気すら醸し出しております。
6話 「三宿ZEST」後編より

「もう やめて」と
言いたげな素振りで
Mは花束を受け取りました。
オペラ劇場の舞台のような
メキシコ料理店。
凹型をした二階席の客は
覗き込むように…。
テラス席の恋人たちは、
振り向きながら…。
楽団の演奏場みたいな
大広場では拍手する人も…。
一種テーマパークのような
この店の全てのひとが
観客でありました。
冷やかすようなテンション…
微笑みを浮かべる眼差し…
様々な視線がMに
投げられるのです。
彼女にはそれが
耐えらないようでした。
いつもの笑顔は見られません。

だけど、これも「おとしまえ」
付き合って貰います。
僕は動じることなく
かすみ草に忍ばせたCDの
プラケースを指差して一言
「聴いて欲しい」と
伝えたのです。

僕には、全てが見えていました。
悲しいことにそれは、
彼女の細かい表情や
目の動きまでも
鮮明に映すし出すのです。
Mは、決して喜んでは
いませんでした…続く。

この舞台に感謝して
また、明日。

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