男女7人高円寺 play back 8話「優しい男」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
東京に一番馴染んで
何でも出来る男…。
そう、思っていました。
だけれど、いつの頃からか
彼は高円寺の集まりに
顔を出さなくなって
しまいました。

心配した僕たちは、
当時 固定式であった彼の
留守番電話機能にメッセージを
残すのですが、次第に返事も
なくなってゆきました。

男女7人が上京して
三年が経った頃…。
サシで飲む機会が訪れました。
彼の住む街は、
京王電鉄 新宿から
三っ目にある駅にありました。
新宿から一里(7キロ)の
距離にあたり
甲州街道の両脇に塚があり
笹に覆われた事から
『笹塚』と呼ばれた街。

美味しい焼き鳥屋が
駅前にあると云うので
僕と彼はその店で
向き合う事になりました。
何気なく訪ねてみます。
「顔 ださんね〜」
【翻訳】
*顔を見せなくなったね
暫しの沈黙のあと彼が答えます。
「思うところがあってね…」
そして、更に言葉を続けました。

東京での生活と
これからを模索し
その中でのプレッシャーに
押し潰されそうな
彼を知りました。
それと同時に同級生と云う
枠の中でいつまでも
甘えてはいられない…。
そんな気心の知れた集まりに
距離を感じているようでした。
陽気に振る舞ってはいても
彼は、人一倍考え
深く悩んでいました。

現在では、
当たり前になりつつある
大学への進学…。
だけど、僕らの時代では
半数以上が就職でありました。
彼の脳裏に浮かんだものは、
『親』であったに
違いありません。
両親の汗水あっての金
つまりは学費としおくり…。
それは、優しい男故に垣間見る
自分に厳しくも親への感謝を
忘れないものでありました。

僕は、何もわかって
いませんでした。
学生気分が抜けきれない
自分自身を思い知らされ
言葉を失います。
会話もそこから先が進みません。
美味しいと評判の焼き鳥も
すっかり冷えて
しまっていました…。

それから暫くして
行きつけであった
高円寺のカラオケ店も閉店し
四年目の節目 卒業と共に
僕たち男女7人の集まりも
終わりを迎えるのでした…続く。

🍋彼の言葉に感謝して
また、明日。

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