汚れなき愛を信じて 総集編 playback…9

☘️三章/25話「慟哭 」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
中央道を抜けた辺りから
僕らの激しい口喧嘩が、
始まりました。
永福町の頭上を走る首都高速。
草臥れた中古車は、
時速80キロのスピードで
駆け抜けていました…続く。

午前2時30分。
真夜中の首都高速。
東京には珍しい
透明な夜空が澄み渡り
摩天楼を凌駕するかの如く
零れ落ちそうな銀色の星屑が
新宿の高層ビルを
包み込もうとしていました。
彼女は、自分のしていることが
分かっているのでしょうか。
これから起こる出来事を
想像すらしないのでしょうか。
彼女は、躊躇いもせずに
走行する車のドアを開けました…。

刹那!
蛇行する車体。
屈折する視界。
不規則な回転音。
フロントガラスの景色が一変する。
不自然な動きは
テールランプの腰振り。
けたゝましく鳴るクラックション。
減速!
激しい摩擦音と歯車のタイヤ痕。
時に重力を失う車内。
瞬間!
前のめりに僕らは打っ伏す。
閃光!
後方車のパッシングに
見失う冷静と座標軸。
激突!
迫る来る中央分離帯…続く。

銀色の星屑に感謝して
また、明日。

☘️26話「慟哭」後編

聞こえてますか?
回避!
動物特有の条件反射は、
バンドルを無意識のうちに
左へと誘う。
圧力!
負荷がかかるその自然の摂理が、
彼女を車外へと押し出す。
咄嗟!
扇がパラパラと開くように
放たれたドア。
助手席から伸びた彼女の腕だけが
疾走するコンリートの上で
その身を支えている。
本能!
切り返したバンドルは、
振り子のように彼女を引き戻す。
止まるに止まれない高速道路。
僕は、もう一方の手で
彼女を掴み
そのドアを閉めるように叫ぶ。
彼女は、
その細い腕をVの字に曲げて
力強く握り締めたその右手で
ドアノブを引き寄せる。
後方にいた筈の物体は、
間一髪で分離帯と
ドアの狭間をすり抜けた!

一瞬のようであり
スローモーションのように
もっとゆっくりであったの
かも知れません。
ただ分かっていることは、
僕らが、生きていると云うことと
彼女が、泣いていたと云うこと。
そしてそれは、
僕が最初に見た
彼女の慟哭であったのです…続く。

生きていることに感謝して
また、明日。

☘️27話「悲しみの入り口」

聞こえてますか?
彼女は、故意に
凪いだ海を時化た海に変えたがる
ところがありました。
ゆるやかな波に
自ら波をたてて
嵐を呼んでしまうのです。
それは、決まって
彼女が深くお酒を飲んだ時に
現れるのでした。

穏やかな物事に
どこか、不安を覚えるように…
時には、深い疑念を持つかのように…
または、乾いた喉を潤すかのように…
そして、それを恐れるかのように…。
彼女自信ですら分からない
その謎に怯えながらも
とてつもない嫌悪を
抱いているようでありました。
その心の葛藤の中で
そうしたそれは、
カタチを変えて
顔を出すのかも知れません。

彼女の目に浮かぶ
悲しみのようなものは、
その入り口に
違いないのでした…続く。

生かされていることに感謝して
また、明日。

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