for you…playback Part 1

🌙spring
1話「三宿のM」

聞こえてますか?
「あなたは嫌いじゃないけれど
きっと好きにはなれない…」
彼女の声は、言葉の玉となり
水面に零れ落ちる雨粒のように
ポトン”ポトンと僕の心に
波紋を拡げて行くのでした。
この静寂に雨音だけを響かせて…。

好きな人がいて
そしてその相手が
同じ気持ちだなんて奇跡に近いこと…。
そう思っていました。
だけど、今をもってしても
解けない謎があります。
あの時 彼女「三宿のM」は、
何故 僕を受け入れてくれたのか?
「そして、あの人…」の存在。
この日記では、
Mとの出会いから
楽曲 for you…が出来るまでを
綴っていきたいと思います。

ここは東京。
渋谷に近くお洒落な大人の街…三宿。
歴史を遡るとその昔
この辺りは、蛇池又は龍池と呼ばれた
水の宝庫であったとか…。
お隣りの池尻
低地部の北には池ノ上。
挟まれるような地形にあるそこは、
水が宿る地と呼ばれ本宿 南宿 北宿
と云う地名から「水宿」が転じて
名付けられた三宿。

国道246号線 玉川通り。
1990年代当時 三宿の交差点近くに
嘗てZESTと呼ばれた
メキシコ料理店がありました。
三宿の彼女Mとは、
そこでアルバイトをしていた
ショートカットの大学生。

「あなたはタイプじゃない」
僕は、その三宿の彼女つまりはMに
こっぴどく振られてしまうのです。
彼女とのはじまりは、
散々たるものでありました…続く。

三宿の街に感謝して
また、明日。

🌙spring
2話「洗えない髪」前編

聞こえてますか?
さらに…。
「あなたの格好が嫌!」
「何よりそんな髪型の人とは
絶対無理!」
僕だって人の子。
そこまで言わなくても…なくらい
正直でもの事をズバリと言う
女性でありました。

ただ、言われて当然な
ところも確かにあったのです。
あの当時の僕は、
打楽器音楽に傾向し
カポエラなる格闘技のダンスを
楽曲に取り入れ
アフリカンに陶酔しておりました。
それに伴い僕の姿形も
変貌を遂げるのでした。

「その髪いつ洗うの?」
三つ編みにした肩まで伸びる髪に
パステルカラーのビーズを
あしらったそれを指差し
Mが言うのです。
それは、洗ってはならない
髪型でした…続く。

あの頃に感謝して
また、明日。

🌙spring
3話「洗えない髪」後編

聞こえてますか?
普通に洗えば、
直ぐに崩れてしまいます。
頭皮だけをマッサージするように
週に一度 ないしは二度…。
痒みに打ち勝てば、人間大抵の
事には慣れるものです。
問題ありません。

以前あなたの事を書いた日記…。
顔の三倍はあろうか
アフロばりのそのくるくるパーマは、
「スズメの巣ですか?」
と言いたくなる代物で、
決して風になびくことのない
その金色の髪の毛は
乾いた紙粘土のようでも
ありました…。
「畦道とハイヒール」episode1より

血は争えません。
奇抜な風貌は母親譲り。
僕はやっぱり
あなたの息子でありました。

そんな事など知る由もないM。
只々彼女には、
我慢がならないのです。
世捨人のような衣装を身に纏い
虫が棲みついても可笑しくない
ロングヘアーのうす汚れた男を
恋愛対象としてどうしても
見れないのでした。
Mは、新種の動物を見るかのように
その眼差しを向けた後
ありえない!とも言いたげな素振りで
被りを振るのでした…。

これより先は、
少しばかり時間を戻して
Mとの出会いから
どうしても洗えない髪と
その仲間たちの話を交え
綴って行きたいと思います…続く。

若かれし頃に感謝して
また、明日。

 

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