🌙spring
4話「アフリカーナ」
聞こえてますか?
昨日の続き…。
これより先は、
少しばかり時間を戻して
Mとの出会いから
どうしても洗えない髪と
その仲間たちの
話を交えながら綴って
行きたいと思います。
若気の至りとは
良く言ったもので
少しだけ思い込みの強い僕は、
心底アフリカンにのめり込み
打楽器と歌の世界を
追求していました。
決してアフリカーナには
なれないものを…。
肥後ノ国 港町である三角は
戸馳島の出身であります。
育って来た環境や
リズムが違うのです。
田舎の友人にしたらこうです。
「わら〜何しよっとや
親が泣くぞ!東京に
魂売って染まったつや!」
【翻訳】
「身の程を知りなさい…
東京に魂売った
男など友達じゃない!
親が泣いているよ」
⬆︎こんな感じであります。
髪を洗えない
残念なアフリカーナ。
それを思い知るに至るに
暫しの時が必要でありました。
Mとの出会いも
そんな袋小路に迷い込んだ
僕の過渡期の話。
四つ年下の彼女との
お付き合いに至るまでの
きっかけは「コップ一杯の水」
でありました…続く。
その水に感謝して
また、明日。
🌙spring
5話「三宿ZEST」前編
聞こえてますか?
東京は池尻大橋。その昔、
龍池と呼ばれたその尻尾に
リハーサルスタジオが
ありました。なんちゃって
アフリカンの僕は、
そのスタジオを砦とし
稽古を終えれば決まって
その龍池の中心部
三宿のメキシコ料理店へと
足を運ぶのでした。
賑わいを見せていたZEST。
田舎育ちの僕にとって
正にそこはテーマパーク。
映画のシーンに出て来ても
可笑しくはない建物であり
ブリキで作られた外壁は、
手抜き工事と思わせる演出で…。
ザックリとビスで
撃ち抜かれたそれは
細部までしっかりと
計算された斬新なデザインで
あったのです。
うす汚れた波型のトタンは、
このお洒落な街にも
さり気なく溶け込んで
見せているのでした…続く。
三宿の酒場に感謝して
また、明日。
🌙spring
6話「三宿ZEST」後編
聞こえますか?
中にお邪魔すれば…
吹き抜けの大開口。
見下ろすように建てられた
凹型の二階は広く
この店内を一望出来る
場所であり吊り下げられた
スプリンクラーは優雅に
ゆっくりと廻っておりました。
階段を上った入り口の
右手にはテラス席があり
夜風を愉しむのに
もってこいの酒飲み場で
中心部の大広場のそこは、
オーケストラの楽団が演奏する
オペラ劇場のような
雰囲気すら醸し出しております。
椋の木を使った贅沢な造りの
一本カウンターは、
荒削り風に施され職人の気概を
感じさせてくれます。
手作りで作られた
指揮台のようなそれは、
奥までと伸びており
この店の象徴でありZESTの
顔でもありました…続く。
今は無き三宿ZESTに感謝して
また、明日。