for you…playback Part 3

🌙spring
7話「お嬢様」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
椋の木を使った贅沢な造りの
一本カウンターは、
荒削り風に施され職人の気概を
感じさせてくれます。
手作りで作られた
指揮台のようなそれは、
奥までと伸びていて
この店の象徴で
ZESTの顔でありました。

僕は、凹型の二階席を好み
ソロで活動していた事もあり
そこで労いを込めて
手伝ってくれるメンバーと
一緒に酒を飲むのでした。
なかなかどうして…。
いつも笑顔で客に
対応するMは、僕が知らない
世界の人のようでした。
山の手の人と云うべきか…。
無垢で清楚を纏ったような
身の振る舞い、育ちの良さ…。
一言でいえば、
絵に描いたような
『お嬢様』でありました。

凹型の席に陣取る
ドレッドヘアーに三つ編み、
スキンヘッドとモヒカン
そして2ブロック
ちょんまげ頭の面々…。
一般的では無い
異様な髪型の集団。
そんな我らにも
気さくに対応してくれる
ショートカットの女子大生M。
最初の印象は、
明るくて感じのいい
お嬢さんでありました…続く。

お嬢様に感謝して
また、明日。

🌙spring
8話「コップ一杯の水」前編

聞こえてますか?
さて、
『コップ一杯の水』の話。
その当時から
大して酒が強いわけでも
ないのに飲み慣れぬ
度数の高い
アルコールを喰らいます。
愚かです。
女性には理解不能な事柄が
オトコ社会にはあるのです。
闘いなのです。
酒の呑みっぷりを
競ったりする生き物なのです。
残念です。

一様座長である僕は、
メンバーを楽しませようと
しゃかりきであります。
弱い癖に一気飲みなどをして
皆を引っ張ります。
旗ふりの役割りなのか
宿命と云うべきか…。
つまらない飲み会では
次が無いのです。
だけれど、
結果は明白。その顛末
酒に飲まれた僕は、深い眠りに
つくのでした…続く。

アルコールに感謝して
また、明日。

🌙spring
9話「コップ一杯の水」後編

聞こえてますか?
「ここはどこ?私は誰?」
ある種テレビドラマのような
シチュエーション…。
最初 目に飛び込んで
来たものは、
天上高く吊り下げられた
三枚翼のスプリンクラー。
それは、その夜の役目を終えて
静かに停止していました。
その次に目にしたものは、
テーブルにポツンと置かれた
『コップ一杯の水』…。
漸く意識を取り戻した僕は、
このお店の閉店を知り
事の真相をスタッフから
教えられるのです。

酔った僕が、メンバーから
揺り動かされても
起きなかったこと…。
諦めた彼らが、僕を置き去りに
笑いながら
帰って行ったこと…。
それから、
喉の渇きを覚えた僕は
ポツンと置かれた
『コップ一杯の水』を
飲み干し勘定を済ませ
メキシコ料理店を
後にするのでした。

あの頃の我ら、即ち
異様な姿形をした男たちに
とって酔っ払い記憶をなくすの
なんて珍しい事ではなく
持ちまわりのバップ(遊び)
の様なものでした。
今日は、誰を潰す!
それがメンバーの理り…。
潰れるのが主流で
あったのです。
ただ、気遣いに
コップ一杯の水を置いていく…
なんて芸風を
彼らが持ち合わせて
いるとは思えません。

後日スタジオに集まった
メンバーのひとり
モヒカン頭の彼が言うのです。
巨漢にその図太い声を
あげながら
「あの水を持って
来たのはあの子だよ」
続けて「ひとりぼっちじゃ
可愛そうだから」と
言っていた事も覚えており
ニヤリとしたその唇に
好奇心を滲ませて
話してくれるのでした。
ポツンと置かれた
『コップ一杯の水』
それは、紛れもなく彼女
Mのことでした…続く。

その優しさに感謝して
また、明日。

🌙spring
10話「M脳」

聞こえてますか?
それを聞いた時の感情を
どう表現すれば良いのでしょう…。
その後、発表される
ハリウッド映画
ブラッド・ピット主演の
【ジョーブラックによろしく】
大切な台詞として
散りばめられた言葉…。
「稲妻に打たれる」
突然やって来る熱い感情
それは痛みすらも帯びた
激しい心の動き。
どうやら、それなるものに
僕も打たれたようです。

元来単純に
構成された僕の脳
なんちゃってアフリカーナは、
そんな些細なことに
異常な反応を示すようで…
リハーサルを終える迄もなく
すっかりM脳に侵食されて
いるのでした。

「打ち上げ何処に行く?」の
号令一下!リハを終え
我らが向った先は、紛れもなく
強いアルコールが多数存在する
メキシコ料理店を置いて
他に無いのでありました…二章
rain seasonへと続く。

新しい恋に感謝して
また、明日。

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