【熱唱時代~小学校編】「二学期」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
今日は気分が乗らないと思えば、
授業を中断して
大好きな歌謡大会を
始めたりします。
本来彼が立つ筈の教壇に
僕らを指名して歌わせるのです。
生徒が歌い終わると、
ニヤリとその口髭をVの字に曲げて
「オォ~レンジのぉ〜」と
鼻歌を一節。
何とも不思議で掴み所のない
変な先生であるのです。

谷吉どんがいうところの
歌謡大会とは、
1970年から1980年代にかけての
歌謡曲をさしていました。
その当時の日本の音楽シーンは、
夜のヒットスタジオや
ザ・ベストテンなどの音楽番組が
お茶の間を賑わしていた時代で
放送日の翌日には、
その話題で持ちきりになる
ほどの人気でありました。
寺尾聰の♪ルビーの指輪
もんた&ブラザーズの
♪ダンスシング・オールナイト
ジュリーのTOKIO!
この章タイトル熱唱時代ならぬ
本家「熱中時代」の主題歌は、
原田潤が歌う
♪僕の先生はフィーバー
刑事編では水谷豊自ら歌った
♪カリフォルニアコネクション
昭和の名曲の数々です。

谷吉どんは、そんな歌謡ショーを
再現するかのように
木造二階建ての
使い古された教壇を
ヒットスタジオへと変えました。
田原俊彦の♪哀愁デート
松田聖子の♪青い珊瑚礁などの
ヒット曲をみなが歌う中
僕は、岸田敏志の「君の朝」
を選曲します。
少し地味だけれど
憂いのある楽曲が
僕の好みでした。
何よりその唄のサビが
お気に入りでありました。
♪モーニング モーニング
君の朝だよ
モーニング モーニング
君の朝だよ
そんな生徒たちの唄を聴きながら
谷吉どんは、満足そうに
煙草に火を付けて
「オォ~レンジのぉ〜」と一節
鼻歌を口遊ぶのでした…続く。

色褪せない歌に感謝して
また、明日。

熱唱時代~小学校編「一学期」

聞こえてますか?
今日はとある先生の話。
どの世界にもある愛称や通り名。
僕が通った小学校でも
親しさの表現方法として
存在していました。
四年生にあがった僕らは、
担任の先生になった彼の事を
愛情を込めて「谷吉どん 」
そう呼んでいました。

彼は一風変わった教育者で
授業中くわえ煙草で
プッカプッカ。
給食時間にも関わらず
プッカプッカ。
本来担任の先生も生徒と同じ
食事を摂る習わしなのに
彼には通じません。
持参した弁当を食べながら、
「パンはすかん!」と一暼。
翻訳
(パンは嫌いだ!)
こよなくお米を愛する谷吉どん。

今日は気分が乗らないと思えば、
授業を中断して
大好きな歌謡大会を
始めたりもします。
本来彼がいる筈の教壇に
僕らを立たせて歌わせるのです。
生徒が歌い終わると、
ニヤリとその口髭をVの字に曲げて
「オォ~レンジのぉ〜」と
満足気に鼻歌を一節 。
何とも不思議で掴み所のない
変な先生であるのでした…続く。

変な先生に感謝して
また、明日。

厚木のトラック野郎全11話その結び 「結婚式」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
一番星に尋ねます。
もう一度居候をしていいかと。
彼の答えは、
「あれは俺の
人生最大一生の不覚!」で
ありました。

1997年 冬。
似合わないスーツを着た
一番星は、
緊張を隠しきれずに
花嫁の横で
ちょこんとなって座っています。
今日は、二人の結婚式。

トラックを転がす彼は、
其れはそれは逞しく
そのどっしりとした
体躯に恥じぬ落ち着きと
安心感を与えてくれていました。
それがどうでしょう。
そこにいる一番星は、
母親に連れられた子供のように
小さく見えてしまいます。

それに比べて彼の花嫁は、
世界中の幸せを
一身に集めたかのように
堂々としています。
今日の主役は、
一番星ではありません。
紛れもなく花嫁でした。
とても綺麗でした。
僕は二人のために
ジョーコッカーの
♪You are so beautifulを
歌います。

アル・パチーノ主演の映画
カリートの道の主題歌で
ラストシーンから
エンドロールにかけて流れる
それは、
とても美しいものでした。
南国の砂浜で踊る
ひとりの女性。
曲が進むにつれて
ひとりまたひとりと
子供たちが登場してゆきます。
海に沈む夕日が
その家族のシルエットだけを
描きだしていました。
僕は二人にその曲を贈りました。
それは、嫁いでゆく
花嫁にぴったりの歌だと
心から思ったからでした。

2017年7月
一番星夫婦は、花を持って
僕のLIVEに来てくれました。
そして、
リクエストします。
あの曲を歌って欲しいと。
僕は、応えます。
アンコールに選んだ最後の曲は、
二十年振りに歌う
You are so beautiful
でした…おしまい。

一番星とその家族に感謝して
また、明日。

 

厚木のトラック野郎 全11話その10 「一番星の嫁」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
まだ二十代だった僕らは、
遊ぶことも笑うことも
何もかもが
必死で本気だった。
そう思えてなりません。

そんな細かい九州男児の
一番星にも嫁さんが出来ました。
余計なお世話!と
あのレンジの高い声が
聞こえて来そうです。
大丈夫です。
もう居候の身の上では
ありません。
民主主義です。
発言は自由なのです。
その頃の僕は、
レコード会社に所属し
庶民権の座を面の皮一枚で
ギリギリ保っていました。
1997年のカレンダーも
僅かなページを残すのみで
その掲載された写真には
雪が舞っていました。

一番星の嫁さんは、
出来た女性で
一歩下がり夫を立てるという
九州男児の嫁のお約束を
地で行くひとでした。
僕と空回りの男は、
そんな彼女を見ながら
舌を巻いてしまいます。
甲斐甲斐しく
当時のアパートに通う
彼女を知っているからです。

そんなことは当たり前と
言わんばかりに
お掃除 お料理 お洗濯
独身男性が夢見る
三大行事を見事にこなします。
至れり尽くせりであります。
しかも関東に住む
都会のお嬢さんです。
亭主関白な男に
そこまで尽くす女性を
肥後ノ国でさえ
希少なものでありました。
何よりその持て成す
料理の数々が絶品でどれも
美味しいものばかりでした。

一番星に尋ねます。
もう一度居候をしていいかと。
彼の答えは、
「あれは俺の
人生最大一生の不覚!」
で ありました…続く。

一番星の嫁さんに感謝して
また、明日。

厚木のトラック野郎 全11話その9 「帰って来た空回りの男」

聞こえてますか?
今日は、あなたも知っている
あの男が主役です。
昨日の続き…。
「中学の友達は一生もの…」
以前 ブログに記した
向山のボス猿の父親が
諭すように言ったことを
酔った彼は必ず
口にするのでした。

昨夜の梯子酒はどこ吹く風か。
一番星に
二日酔いなどありません。
日曜日は、お昼から向かい酒。
新たな仲間も加わり
中津川の河川敷で
BBQ大会が始まります。
今も昔も変わらず
女の子が加われば
場に花が咲き盛り上がるのが
世の常であります。
空回りの男の出番です!

彼は喜ばせようと
いつもの様にひょげ倒します。
男女7人高円寺の事はいざ知らず
この厚木の地であっても
失笑です。
やはりそれは、古今東西津々浦々
どこを探しても
例外はないようです。
日本全国共通の理り…。
残念です。

だけどそれで治る
空回りではありません。
当時人気を博したハリウッド映画
ターミネーター2の
テーマ曲を口遊びながら…。
♪ダッダッ ダッ ダダ×2
笑わなかった者たちを
片っ端から川へと導き
なぎ倒してゆきます。

ガタイの良い(がっちりした体)
彼は長身であり
怪力の持ち主でもありました。
何より顔のデカさといったら
ターミネーター顔負け
であります。
最初のターゲットは、
一番星でした。
軽々と抱えられ水の中へ。
♪ダッダッ ダッ ダダ×2
僕の番です。
目を合わせてはなりません。
俄然調子に乗らせてしまいます。
無駄でした。
僕も一番星の後を追うように
中津川へ放り込まれます。
迷惑です。

盛り上がったと
勘違いした空回りは、
更にギアーを
トップにあげました。
女の子に狙いを定めます。
愚かです。
もうここまで来たら独壇場。
何人たりとも
彼を止める事など出来ません。
最終的に
一番星の同僚及び
参加した全員が、
空回りの男の餌食となり
水に濡れながらの
BBQとなってしまいました。

まだ二十代だった僕たちは、
遊ぶことも笑うことも
何もかもが必死で本気でした。
そう思えてならないのです…続く。

あの頃に感謝して
また、明日。

厚木のトラック野郎 全11話その8 「淋しがり屋」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
何軒か梯子し
朝方まで飲み明かします。
それが一番星のパターン
彼の流儀でした。

一番星は、田舎の友達を
とても大事にしていました。
気を使いながらも
中学の同級生が遊びに来たら
とことん付き合い遊び倒す
そんな男でした。
少し潔癖で
融通の効かないところは
あるけれど
同僚の先輩や後輩が
彼を大事にしていることが
僕と空回りの男には
わかるのです。
それは、本当の一番星を
知っているからです。
彼は、さりげなく気を使い
自分よりも周りが
愉しんでいることに
何よりも心を砕きます。
その面構えと体躯に似合わず
一番星は人一倍「淋しがり屋」な
一面を持ったいました。

「中学の友達は一生もの」
以前日記で触れた向山のボス猿の
父親が諭すように言ったことを
酔った彼は必ず
口にするのでした…続く。

愛川の夜に感謝して
また、明日。

厚木のトラック野郎 全11の7 「長い夜」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
あの日の彼は、
本物のトラック野郎に
なっていました。

一軒終わればまた一軒。
鞍替えした場末のスナックは、
時代から取り残された
ような佇まい。
僕らの父親の世代から
活躍していたであろう
年季の入ったカウンターは、
店の奥までとのびていて
木製で造られたそれは、
店構えの象徴でもあり
拭いきれないグラスの
水跡が味でした。
赤いベルベット調の生地を
贅沢にあしらったボックス席は、
何年にも渡って吸い続けた
帰りたくない男達の
汗と涙の歴史を
物語っているかのように
その店を縁取っていました。

一見廃れたようなそれを
一番星は、風情と呼びました。
小洒落たものに
異常な拒否反応を示す彼に
都会派なものなど通用しません。
昔ながらのそれを受け継ぐもの…。
例えていうならば、
赤提灯と肴は
炙ったイカであります。

それが揃えばあとは唄。
カラオケをこよなく愛する
彼の十八番は、
松山千春の長い夜でありました。
なかなかどうして
ロングトーンはお手のもの。
うまいものです。
気をよくした彼は更に
喉を鳴らし歌い続けます。
そのあとも、
馴染みとするお店を
何軒か梯子し
朝方まで飲み明かします。
それが一番星のパターン
彼の流儀なのでありました…続く。

時代遅れの男たちに感謝して
また、明日。

厚木のトラック野郎 全11話その7 「長い夜」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
厚木の一番星は、
まさしくあの頃の夢を
叶えたのでありました。

週末ともなれば、
一番星の同僚が集まり
あの頃一番の賑わいをみせた
居酒屋 建六に繰り出します。
トラック野郎の
長い夜のはじまりです。
以前日記でも触れた
男女7人高円寺の登場人物
空回りの男も駆けつけます。
彼は遅咲きの大学生になっており
ピカピカの一年生でありました。
花のキャンパスライフなる日々を
送っていると思いきや
ノミカタ(飲み会)の情報を
仕入れるや否やこうして
愛川の街にやって来るのでした。

トラック乗りとのノミカタは、
豪快で楽しいものでした。
何より気持ちのいい男達ばかりで
一番星のダチというだけで
他は何も入りません。
よそ者の僕らを無条件で
受け入れてくれます。
「さしよりビール!」の号令一下
東京で言う所の「とりあえず生」
に男達は手を挙げます。
仕事終わりの一杯は、
其れは其れは格別なものでした。

熊本の方言でもあるさしより。
明治時代の文豪 徳富蘆花が
自身の作品で記した差し寄り。
何処であっても
一番星はその言葉を使います。
それは、
故郷を忘れまいとする哀愁と
この地に身を置きながらも
関東に負けまいとする
彼なりのこだわりでした。
僕はそんな一番星を眺めながら
友達で良かったと
今更ながらに思うのです。

酒が進めば、
トラック野郎の大切なアイテム
無線の話題に花が咲きます。
身振り手振りで彼らは語るのです。
仲間同志の渋滞情報や
独自の抜け道などを交換する
やり取りのそれは、呪文のようで
僕にしてみたら最後の
「〇〇〇〇どうぞ〜」
しか分かりません。
だけど特殊技術でもあるだけに
そのプロフェッショナルな話は、
とても新鮮なものでした。
一番星にあっては、
もう既に文太さんになりきって
エアー無線 実演の真っ最中。
あの日の彼は、
本物のトラック野郎に
なっていました…続く。

トラック野郎に感謝して
また、明日。

厚木のトラック野郎 全11話その6 「夢」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
それぞれのルーティーンが
終わりまた
はじまるのでした。

一番星は中学生の頃
休み時間になると
トラック雑誌を広げ
食い入るように
見つめていました。
雑誌に穴が
空きそうなくらいです。
「こん トラックの
テールランプは武者んよか~」
翻訳
*武者んよか~とは
武者振りが良いという
勇ましい武士に使われた言葉で
カッコイイの表現を
僕らは類似語として
それを多用していました。

こうも熱く語っています。
「菅原文太は
そにゃー武者んよか」
「おら〜絶対
トラック運転手になる」
翻訳
(菅原文太のような
トラック乗りになる)
銀幕の大スター菅原文太。
仁義なき戦いでも有名な
彼のもう一つの ハマリ役
「トラック野郎」を
さして彼は言うのです。
その映画の主人公が、まさに
星桃次郎「一番星」でした。
大型トラックで全国を駆け巡る
痛快娯楽ロードムービー。
彼にとって
トラック野郎の菅原文太
こそが憧れであり
夢の象徴でありました。

だけれど、熱く語る彼に
不安を感じずには
いられません。
どうも本当に文太さんが、
トラックの運転手だと
勘違いしている節がありました。
菅原文太は俳優さんです。
なんて水を差すようなことは
言えません。
中学二年生の彼は、
丸坊主の純粋な子供でした。

果たして彼が思い描く
文太さんになれたかは
謎だけれど、
今こうして全国津々浦々
トラックを転がす
厚木の一番星は、
まさしくあの頃の夢を
叶えたのでありました…続く。

文太さんに感謝して
また、明日。

厚木のトラック野郎 全11話その5 「ルーティーン」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
全ての段取りを終えた
この家の主は、やっとこさ
風呂をいただくのでした。

やはりいらぬ心配を
してしまいます。
絵に書いたような九州男児。
その割りに細かい一番星。
嫁さんは大変だな…。
それから僕は、
いつものように
ざっくりと布団を折り曲げて
その奥へと押しやり
テレビを付けました。

風呂から上がった一番星は、
ドライアーと格闘しています。
アイパーをあてた
お気に入りのリーゼント。
その髪型を整えるのに
大忙しであります。
癖の強い毛の生え際
その左側がどうしても膨らむ!
などと嘆いております。
大丈夫です。
誰も気にしません。
何ゆえセットが
必要なのでしょう…。
後は寝るだけなのに…。
口には、だしません。
僕は居候です。
わきまえております。

長〜い髪型の
セッテングを終えて
一番星はやっとこさ
ビールとつまみに
ありつきました。
僕は、晩メシならぬ
朝ごはんを食べ
深夜の仕事に備えます。
それぞれの
ルーティーンが終わり
そしてまた、
はじまるのでした…続く。

日々の生活に感謝して
また、明日。