男女7人高円寺(全10ノ9話)

聞こえてますか?
昨日の続き…。
僕たち高円寺の集まりも
終わりを迎えるのでした。

忘れるところでした!
男女7人の最後のひとり。
あなたもよく知る彼のこと。
空回りするあの男のお話です。

彼は、僕たちを喜ばせようと
いつもひょげて見せます。
ただ「笑かせよう」感が
強すぎて残念なことに
空回りをしてしまいます。
そこで終われば良いのに
彼はそれを繰り返すと云う
稀有なハートの持ち主でした。

どうだー!な顔で
二度 被せてきます。
女子三人組の失笑を
食らってもめげません。
三度目には、優しい大学生の
舌打ちが聞こえます。
四度目になると、
温厚な花の男も見限り
無視を決め込みます。
流石に五度目は…。
悲惨です。愚かです。迷惑です。
目も当てられません。
でも僕は、そんな彼の
「ひょげざま」が好きでした。
なぜなら
決して面白くはないけれど!
馬鹿を演じた彼の
生真面目さを誰よりも
知っているからです。

こんなエピソードがあります。
それは、僕ら同級生が
上京して二年が過ぎた頃。
就職組の彼が、7人集まる中で
突然
「おら〜しごっば やむっ」
翻訳
(俺は、仕事を辞めるよ)
と言ったことから
始まります…続く。

空回りの男に感謝して
また、明日。

男女7人高円寺(全10ノ8話)

聞こえてますか?
昨日の続き…。
でも、いつの頃からか
彼は高円寺の集まりに
顔を出さなくなって
しまいました。

心配した僕たちは、
当時 固定式だった留守番電話
機能にメッセージを残す
のですが、次第に返事も
なくなりました。
上京して三年が経とうと
していました。
そんな中 一度サシで
呑む機会が訪れました。
彼が住む街は、京王電鉄で
三っ目の駅にありました。
新宿から一里の距離にあたり
甲州街道の両脇に塚があり
笹に覆われたことから
笹塚と呼ばれた街。
美味しい焼き鳥屋が駅前に
あると云うので
僕らは、久しぶりに
そのお店で向き合うことに
なりました。

何気なく尋ねてみます。
「顔 出さんね〜」
沈黙のあと 彼が答えます。
「思うことがあってね」
更に言葉を続けてくれました。
東京での生活と
これからを模索し
その中でのプレッシャーに
押し潰されそうな
彼を知りました。
それと同時に同級生と云う
枠にいつ迄も甘えられない…。
そんな気心の知れた集まりに
距離を感じている
ようでもありました。
陽気に振る舞っていても
人一倍考え
深く悩んでいました。
僕は、何もわかって
いませんでした。
学生気分が抜け切れていない
自分自身を思い知らされ
僕は、言葉を失くします。
会話もそこから先が
続きません。
美味しいと評判の焼き鳥も
すっかり冷えて
しまっていました。

それから暫くして
行きつけの高円寺の
カラオケ店も閉店し
四年の節目 卒業と共に
僕たち男女7人の集まりも
終わりを迎えるのでした…。

彼の言葉に感謝して
また、明日。

男女7人高円寺(全10ノ7話)

聞こえてますか?
昨日の続き…。
りぃー子は
あの頃と変わらず
今も健在でした。

男子7人の中には、
大学生がもう一人いました。
彼は、いち早く方言と云う
高いハードルを克服し
頭も切れ話題も豊富 。
話上手でいつもその場を
盛り上げてくれます。
それでいて、東京に馴染めず
人と上手く話せない僕を
気遣う優しい男でもありました。

例えば、電車の移動方法。
間違えても馬鹿にする事無く
丁寧に教えてくれます。
自分の友達を紹介したり
物怖じする僕を学園祭に
連れ出してくれます。
当時ハマった銀河英雄伝説の
ロールプレイングゲーム。
最初から躓いても
根気よく付き合っても
くれました。

東京に一番馴染んで
何でも出来る男
そう、思っていました。
でも、いつの頃からか
彼は高円寺の集まりに
顔を出さなくなって
しまいました…続く。

優しい男に感謝して
また、明日

男女7人高円寺(全10ノ6話)

聞こえてますか?
昨日の続き…。
彼女は思わず吹だします。
僕たちの共通の話題。
行きつけのカラオケ店
高円寺に南口にあった
song for USAを
思い出したからでした。

毎週土曜日の夜は、
北口の純情商店街の先にある
僕のアパートに一度集まり
それから南口に繰り出すのが
いつものパターンでした。
現在のカラオケBOXとは
異なり 店の看板となる
ステージで歌うそれは、
ライブハウスのようで
一種の緊張感を
演出していました。
何よりスタッフ一体となって
盛り上げるスタイルの
song for USAは、
馴染みの常連客で
賑わいを見せていました。

女性上位の男女7人。
主導権はいつだって
彼女たちでした。
楽しい事とスイーツに
目がない女性の
本能というべきか…。
男狩りにでも行くかの如く
女子三人組が先頭を切って
純情商店街を闊歩する様子は、
其れは其れは勇ましく
威風堂々たるものでした。
僕ら男たちは、
彼女たちの背中を
眺めながら
母親に連れられた
子供のように
後に続いて歩くのでした。

あれから二十数年。
気を遣いながらも
笑顔を絶やさない
りぃー子は、
あの頃と変わらず
今も健在でした…続く。

りぃー子に感謝して
また、明日。

男女7人高円寺(全10ノ5話)

聞こえてますか?
昨日の続き…。
本当に甘えていたのは、
僕の方だったのかも
知れません。

2017年 男女7人の一人
りぃー子と呼ばれていた
彼女に会いました。
就職で上京した彼女は、
7人の中のムードメーカー。
男たちのから騒ぎにも
いつもニコニコ笑顔で
対応してくれる人でした。

二十数年振りの再会。
とても愉しい時間を
過ごしました。自ずと
あの頃の話題にもなります。
彼女が言いました。
「あんた達
よ~喧嘩しよったね〜」
僕も続けます。
「あんた達三人 純情商店街ば
我が庭ごつモンローウォーク
ばりに闊歩しよったね〜」
翻訳
(高円寺の純情商店街を
私の街よ~と言わんばかり。
ハリウッド女優
マリリン モンローのように
颯爽と歩いていたよね〜)

彼女は思わず吹だします。
僕たちの共通の話題。
行きつけのカラオケ店
高円寺の南口にあった
song for USAを
思い出したからでした…続く。

再会に感謝して
また、明日。

男女7人高円寺(全10ノ4話)

聞こえてますか?
昨日の続き…。
それは、彼女が生まれ持った
淋しさのようなものに
思えてなりませんでした。

同じ高円寺の街に
住んでいたせいもあってか
彼女は、困りごとの度に
その独特な甲高い声で
頼みごとをしてきます。
近所付き合いとは言え
甘えは禁物です。

「終電に乗り遅れた」
当時 固定式だった電話の
ベルを喧しく鳴らします。
呼びだしです。
夜中でも彼女は御構いなし。
迷惑です!
僕の家の電話に勝手に出ます。
ダメです!
学校で何かあったのか、
愚痴を言いにやって来ます。
矢継ぎ早にひとしきり
喋り倒したあと
腹の虫が収まったのか、
ケロっとして帰って行きます。
眠いです!
僕ら7人は、計画を立てて
よく旅行に出かけました。
旅の途中 面倒なことになると
決まって僕を指差します。
愚かです!

いつも ぶつかってばかり…。
だけど一番一緒に居たのは、
彼女のような気がします。
明るく振る舞ってはいても
手強いこの東京の街に
なかなか馴染めない不安な
彼女を感じていたからです。
本当に甘えていたのは、
僕の方 だったのかも
知れません…続く。

厄介な彼女に感謝して
また、明日。

男女7人高円寺(全10ノ3話)

聞こえてますか?
昨日の続き…。
手伝ってくれた
優しい声の人の
貴重な時間を忘れません。

週末は、高円寺の僕の砦に
同級生 男女7人が集まります。
その中にひとり
とても厄介な女性がいました。
大学の進学で上京した彼女。
僕たちはよく
言い争いをしました。
何事も否定的な彼女の物言いに
食ってかかるのですが、
遥かに劣る僕のボキャボラリー
負けは明らかでした。
いつも取り成すのは、
花の男と優しい声の人。
それから僕ら7人は、
気分を変えて高円寺の南口にある
カラオケ店へと向かうのでした。

先程の喧嘩は何だったのか…。
当時流行っていた
Winkの淋しい熱帯魚を
彼女が振り付きで歌っています。
その一種独特な甲高い声で
ケタケタと笑いながら。
僕は彼女のその切り替えの早さに舌を巻いてしまいます。
自由奔放で真っ直ぐな人でした。
だけれど、気が強そうに見えて
本当は脆いことを彼女の何処かに感じてもいました。
時折りそんな瞳をするからです。
それは、彼女が生まれ持った
淋しさのようなものに
思えてなりませんでした…続く。

喧嘩友達に感謝して
また、明日。

男女7人高円寺(全10ノ2話)

聞こえてますか?
昨日の続き…。
あれから二十数年。
帰郷した花の男は、
熊本の戸馳島でとても綺麗な
蘭の花を育てています。

その頃の僕は、作詞家であり
劇作家でもある方の門下生
付き人を生業とし
車の運転 鞄持ち 物書きの勉強を
して過ごしていました。
そんな僕の書く詞や物語を
男女7人の中で熱心に
読んでくれる女性がいました。
物腰はいつも柔らかく 控えめで
優しい声を持つ人でした。
それでいて、読み終えたあとの
彼女の助言は辛辣で容赦無い
批評が展開されます。
僕はこうべを垂れて
よく書き直しをしたものです。
その優しい声に秘めた強い意思
みたいなものを感じていました。

徹夜の時も付き合い
ワープロで文字を起こし
てもくれました。
鉛筆からインクへと様変わりする
整頓された文字の色とカタチ。
拙い僕の文章が
綺麗に化粧されていくようで
とても嬉しかったのを
覚えています。手伝ってくれた
彼女の貴重な時間を
僕は忘れません…。

優しい声に感謝して
また、明日。

男女7人高円寺(全10ノ1話)

聞こえてますか?
東京は中野区
中央・総武線の各車両
二系統が停車する駅。
その高円寺にある
六畳一間のアパートが
僕の最初の砦でした。
週末になれば其処へ
上京した中学の同級生
男女7人が集まります。
大学進学 就職の者
専門学校で
花を学びに来た者も。

その花の彼は、普段とても
無口だけれど
いざって云う時は頼りになる男で個性がバラバラな僕たちの
まとめ役でもありました。
爪の間には花の命である土が
いつも入り込んでいました。
何度洗っているにも
かかわらず取りきれない土。
僕は、その爪を見る度に
誇らしく思ったものです。
朴訥として淡々とした振る舞い。
それでいて強い信念と
独特のリズムを持った男。

あれから二十数年。
帰郷した花の男は、
今も熊本の戸馳島でとても綺麗な蘭の花を育てています…続く。

花の男に感謝して
また、明日。

夏の花火と君の横顔

聞こえてますか?
夏の思いでを歌詞にしました。

夏の花火と君の横顔を
見つめてた
ずっと見惚れていたいけど
気づいてしまうから

そっと隠した 夜の影
君を探したら
恋はいつも ひとりぼっち
切なさをとめて

青紫 淡い緑 エニシダの黄色
薄紅のダリアの赤

涙を誘う 夜の虹
零れないように
瞬きさえ出来ない 夏の花火

たとえ儚い 夢だとしても
いつの日か君に
咲かせたい 僕だけの花を

涙を誘う 夜の虹
零れないように
瞬きさえ出来ない 夏の花火

瞬きさえ出来ない 夏の花火

夜の虹に感謝して
また、明日。