for you…playback Part 5

🌙rain season
14話「ダイヤルM」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そして、最大のミッション
「ダイヤルM」即ち
彼女の電話番号を聞きだす事が
果たして出来るので
ありましょうか❗️

どちらかと言えば、異性との
会話に不慣れなアフリカーナ。
親に反抗し犬以外に
心を許さなかった幼少期。
色気付いた青年期は男子校…。
全ては雄と男社会で
育って来たのです。
歩んで来た道が違うのです。

丸坊主の中学生が進級し
髪を伸ばせることに
一喜一憂した高校時代。
前髪の伸びが
遅いことに業を煮やし
フローリンと云う名の
育毛液を頭皮に
ふり掛けていたあの日…。
苦労の甲斐あってか
アイパーをあてる迄に至った
最初の髪型はリーゼントでした。
その時の歓びは
云うまでもありません。
そんな青春時代を
送って来た男に電話番号GET
なる超高度な技術
ハイセンスなスペックを
学ぶ機会も時間も
有りはしないのでした…。

だけれど、チャンスは
待ってはくれません。
ぶっつけ本番の真剣勝負!
手際の良いMのレジ捌きは
見事なものです。
僕は只々間合いを
伺っておりました。
心の中で掛け声を…
(いち にいー の~さん)
今だ!の瞬間
お釣りが手渡されました。
口が開いたの同時にMの
「有難う御座いました」に
僕の「あの 電…」は
掻き消されてしまうのです。
足早に勘定場を去る
彼女の姿を目で追う他に
術がありません。

異様な髪型軍団の面々は、
笑いながらおでこに
手をあてて「あいた〜」と
ばかりに空中を仰いでおります。
僕は振りあげた拳ならぬ
「番号教えて」を言えない
ままにそのか細い声の
落し所を探すのです。
十代で学ぶべき試練なるものを
二十代中盤で体感する
悲しきアフリカーナ。
遅すぎた思春期…。
青くて苦い失敗でありました。

大人の酒場 三宿。
店の階段を降りれば、
この街にも
雨の匂いを含んだ風が
吹いていました。
それは、夏を迎えるための
長い梅雨前線の
到来でありました…続く。

青い体験に感謝して
また、明日。

🌙rain season
15話「センスマン」

聞こえてますか?
「ナンパしたことないの?」
もう一人の踊り子
2ブロックちょんまげ頭が
口火を切りました。
このepisodeには、
育って来た環境
また、風土の違いを語って
置かなければなりません。
少しばかりMの話からは反れ
肥後もっこすの話に
お付き合い願います…。

昭和61年 熊本城下町。
熊本市内に進学した
男子学生達を
大きく二つに分けると
こうなります。
肥後五十二万石 加藤清正 創建
熊本城が見える距離で育った
市内弁を使う山の手の方々を
「センスマン」と云い
もう一方、城下には程遠い
山岳部 海岸地帯から
汽車やバス 渡し船など
あらゆる交通手段を使って
通う者を「ヤンキー」などと
呼んでいました。

この両者、髪型も違えば
ファッションも異なり…
何より言語が違うのです。
同じ熊本地方にあって
言語が違う?と
お思いでしょうが
それは、多感な男たちの
棲み分け手段としても
顕著に現れます。

⚠️(センスマンが使う言葉)
「〜だっちかっ」
【翻訳】
「だけど」を
山の手のセンスマンは、
「ばってん」を使わずに
高等なスタッカートを利かせて
だっちかっ”と表現して
見せます。市内弁(センスマン)の
特徴のひとつであります。

そして、
マッシュルームのような
髪型をした彼らの
十八番と云えば
ナンパでありました。
熊本最大の歓楽街
裏(うら)上通り裏(うら)下通りで
揃えたブランドの服を着こなし
そのさらさらとした
前髪をなびかせて
さりげなく
異性の懐深く入り込む
人種なのでありました…続く。

高校時代に感謝して
また、明日。

for you…summer 39話「夏の嵐」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
悲しい情報を伝達する
電波信号機のそれは、
この手のひらから零れ落ち
何も考えられなくなった僕は
阿呆の如く焦点の合わない
空間的なものを只々見つめて
いるのでした…。

昨夜から降り続く雨は、
明け方から勢いを増して
東京上空の色を
変えて行きました。
庭に面した窓は、
危うい金切り声を上げています。
夏の嵐に煽られたそれは、
僕の心をも激しく乱して
ゆくのでした。

【回想】
お台場ドライブを愉しんだ後…。
どちらからとも無く切り出した
これから…。
いつもより何処と無く
はしゃいでいる様子だったMも
もうひとつの橋を渡る時には
沈黙を守っていました。
東京湾岸道路 国道357号線…。
その荒川河口橋から見える
葛西臨海公園の観覧車。
雨に煙るその灯りを眺めながら…。
31話「夏の夜の夢 後編」より

あの時彼女は、
何を思っていたのだろう…。
不自然なほどに
陽気に振る舞っていたM。
橋の上から見つめていたもの…
それはいったい…。

さっきまで手にしていた
電話の受話器は、
板張りに転がったまま
その居場所を失い
不通音を鳴らし続けています。
それは、彼女との
「おしまい」を知らせる
メッセージであるかのように
何度も何度も
繰り返しているのでした…続く。

遠い夏の日に感謝して
また、明日。