for you…summer 23話「緑色のドア」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
僕は歩幅を緩めたい気持ちで
いっぱいでした。
立派な門構えの前まで来たら
お別れです。役目を終えた
淋しいアフリカーナは、
バイバイと手を振って
今来た道をとって返すのです。
そののひと時を
噛み締めながら…。

下馬散歩の後は、
勤務先である新宿歌舞伎町
のBARに向かいます。
その当時の僕は、
深夜に働き昼間寝るといった
一般の人とは真逆な生活を
送っていました。
雑居ビルから出された残飯を
カラスが突っつく頃に
一日の終わりを迎え
「緑色のドア」が目印の
自宅に帰るのです。

東京は江戸川。
その支流である川辺に
特殊な色使いをした
テラスハウスがありました。
都営新宿線一之江駅から
徒歩で20分。
東西線 葛西駅からでも25分…。
歩くには不便な場所にも拘らず
そこを寝床に決めたのには
理由がありました。

音楽以外たいして興味を
示さないアフリカーナにも
ガーデニングといった
唯一の趣味があり
日当たりの良い小さな庭が
あるのも大きな要因でした。
だけど、何よりもその印象的な
「緑色のドア」に魅せられて
この川辺の家の鍵を
手にしたのでありました。
せちがない都会での生活で
その扉の向こうに小さな夢を
見いだしていたのかも
知れません…。

そこには、コンクリートで
整備された駐車場も付いており
車通勤には有難いものでした。
日課になりつつある下馬散歩。
そして、今日も僕は草臥れた
中古車を走らせるのです。
海岸通りからお台場の
レインボーブリッジを渡り
一路Mのいる街を目指して…続く。

川辺の家に感謝して
また、明日。

for you…summer 22話「下馬散歩」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
彼女は、分からない事は聞き
思った事は素直に
言うひとでした。
決して強い物言いではなく
やわらかな口調で…。
上からでもない
丁寧な言葉遣いで…。
いつも自然体で、どこか
天然色を持ち合わせたM。
その飾らない笑顔が、全てを
物語っているのでした…。

「夢があることは羨ましい」
続けて彼女は、これからの話も
聞かせてくれました。
ファッションに興味を持つM。
大学を卒業したら服飾系の
仕事に就きたいようでした。
なるほど、Mの私服は
奇をてらわず
何気なく着こなした
デニムでさえスタイリッシュに
見えたものです。
それはシンプルで
何より爽やかでありました。
ズダ袋を頭から被ったような
髪を洗えないアフリカーナとは
どうにも吊り合いません。

【回想】
あなたは、
後に語っていましたね…。
「Mさんは、
元気にしているのかな…?」
大学卒業後、
大手アパレル会社に就職し
社会人デビューを飾ったM…。
彼女のからのプレゼント
フェラガモの靴を
あなたは「勿体無い」と
言いながら一度も履くことなく
最後まで大切に
しまっていましたね…。
Mの気遣いと、あなたの貧乏性を
何処か微笑ましく
思ったものでした…。
「マーマレード」
〜あなたのepisodeより

夏の夜の下馬散歩は、
僕にとって
かけがえのないもので
上空に広がる東京の星空も
キラキラと輝いて
見えたものです。
彼女の家は、下馬にある
二階建ての一軒家。
世田谷公園の先を右に折れたら
家族が待つ彼女の自宅。
それは、今日の
「おしまい」を意味しています。

僕は歩幅を緩めたい気持ちで
いっぱいでした。
立派な門構えの前まで来たら
お別れです。役目を終えた
淋しいアフリカーナは、
バイバイと手を振って
今来た道をとって返すのです。
そののひと時を
噛み締めながら…続く。

東京の星空に感謝して
また、明日。

for you…summer 21話「下馬散歩」中編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
最初は迷惑そうだったM…。
そんな熱意を汲み取ったような
半ば諦め…根負け感も否めない
僕らの「下馬散歩」が
はじまるのでした。

「その髪いつ洗うの?」
三つ編みにした肩まで
伸びる髪にパステルカラーの
ビーズをあしらった
それを指差しMが言うのです。
少しは、僕に興味を持って
くれたのでしょうか…?
気分を良くした
なんちゃってアフリカーナは
語り出すのです。
自身の洗えない髪のこと…。
夢と音楽の話…。

しっかりと目を見て
会話をすることや
人の話に耳を傾けて
ちゃんと聞くその姿勢に
「品」と云うものを
感じずには要られません。
両親の愛情を一身に受けて
大切に育てられたのだと
改めて思うのです。

彼女は、分からない事は聞き
思った事は素直に
言うひとでした。
決して強い物言いではなく
やわらかな口調で…。
上からでもない
丁寧な言葉遣いで…。
いつも自然体で、どこか
天然色を持ち合わせたM。
その飾らない笑顔が、全てを
物語っているのでした…続く。

飾らない笑顔に感謝して
また、明日。

for you…summer 20話「下馬散歩」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そんな、度重なる失敗の中
あの手この手を模索し
行き着いた先が
夜の遅いバイト帰りに
自宅まで送ると云うChallenge❗️
名付けて「下馬散歩」
でありました。

ドイツ車とは名ばかりの
草臥れた中古車であっても
5分とはかからない距離。
それではもったいない…。
僕は、徒歩での警護ならぬ
頼まれもしない
ボディーガードの役を
買って出たのです。
風貌からして、好き好んで
異様な髪型をした人物に
声をかけたりする者は
皆無であります。
物騒な夜のひとり歩きには
もってこいの人材でありました。
歩いて10分の僅かな道のりに
僕は全てを賭けました。

最初は迷惑そうだったM…。
そんな熱意を汲み取ったような
半ば諦め…根負け感も否めない
僕らの「下馬散歩」が
はじまるのでした…続く。

散歩道に感謝して
また、明日。

for you…summer 19話「Challenge」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
彼女の電話番号を聞くに
至るのは、長い梅雨が明け
この三宿の街にも
夏を知らせる風が
吹く頃でありました。

漸く彼女Mの電話番号を
聞き出す事に成功した
三つ編みアフリカーナ。
新たなる関門 !
自宅に電話すると云う
何とも胃の痛い経験と
持ち前の根拠なき自信を武器に
彼女との距離を詰めようと
必死でありました。

そんな努力の甲斐あってか
今こうして、Mが働く三宿から
彼女の自宅である下馬への
道のりを散歩する迄に
成長を遂げていました。
僕にしてみたら
大した進歩であります。

first touch !
東京03に手を伸ばした
ダイヤルする時の指の震え。
過呼吸を覚えるほど
吸い込んだ深呼吸…。
まるで中学生のような有り様。
会話にしても本人以外が
電話に出ることを想定して
(もしもお母さんが出たら)の
イメージトレーニングに励み
前もって下書き(台本)を書く
念の入れようでありました。
だけれど、
リハーサルは所詮 予定調和。
LIVEでは使いものになりません。
メンタルと本番の弱さに
苦々しいデビューを
飾るのでした…。

そんな、度重なる失敗の中
あの手この手を模索し
行き着いた先が
夜の遅いバイト帰りに
自宅まで送ると云うChallenge❗️
名付けて「下馬散歩」
でありました…続く。

繋がることに感謝して
また、明日。

for you…rain season 18話「肥後五十二万石」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
我らの世界では「ぬしゃ~
市内に染まった人種の違う!」
【翻訳】
「君はかぶれてしまったんだね」
などと冷遇され
その者の名は地に落ち
昔で云うところの
村八分の体で扱われ
連れ(仲間)としての絆
地元を往き来する
道中手形なるものを
失うのでありました。

たかだか九州の
その又一国の話…。
そうではないのです。
そんな五十二万石
肥後一国の中であっても
様々な人たちの古くから
培って来た風土や風習…
暗黙の了解が根付いていると
云う事なのです。

硬派と云えば、
聞こえ栄えはするものの…。
我らリーゼント
「ヤンキー」族は、
そんなチャラチャラした
鼻持ちならない
「センスマン」を
どこか羨ましく思いながらも
代々受け継がれてきた
先輩たちの習慣や掟を
大事にする生き物なのでした。

さて、話は戻り…
時は平成 江戸三宿。
「ナンパしたことないの?」
もう一人の踊り子
2ブロックちょんまげ頭が
揶揄うように
上から目線で言いました。
僕にしてみたら
ナンパ出来ない事など
恥ずかしい事ではないのです。
上方育ちの「大江戸センスマン」
には解らない手前の
事情だってあるのです!

それからも
肥後もっこすアフリカーナの
死闘は続き…
「ダイヤルM」の遂行に
かなりの時間と大量の酒代を
必要とするのでした。
彼女の電話番号を聞くに
至るのは、長い梅雨が明け
この三宿の街にも
夏を知らせる風が
吹く頃でありました…三章
summerへと続く。

肥後もっこす者に感謝して
また、明日。

for you…rain season 17話「肥後もっこす」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そしてポマードを練り込んだ
それは、年配の大人の匂いを
彷彿させたものであり
それは正にひと昔前の
仏映画スターアラン・ドロンの
(風)の香りなのでありました。

洋服にしてもちょっとした
お出かけの際には、
そのサンロードの玄関口
紳士服の「フタタ」
なのであります。
江戸で云うところの
紳士服の青山なので
ありましょう。
当然 異性の懐は遥かに遠く…。
話題といえば、
Kawasaki Z400GPの
カラーリングがどうの…だとか
誰かが停学を喰らった…などの
会話が主流でありました。
熊本女子がセンスマンに靡くのも
道理と言えば道理…。
無理のない事でありました。

そんな「肥後もっこす」
同士の対立軸の中で、
センスマン つまりは
ナンパ野郎に染まって行く
裏切り者もしばしば現れ…。
我らの世界では「ぬしゃ~
市内に染まった 人種の違う!」
【翻訳】
「君はかぶれてしまったんだね」
などと冷遇され
その者の名は地に落ち
昔で云うところの
村八分の体で扱われ
連れ(仲間)としての絆
地元を往き来する
道中手形なるものを
失うのでありました…続く。

高校時代の連れに感謝して
また、明日。

for you…rain season 16話「ヤンキー」

 

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そして、
マッシュルームのような
髪型をした彼らの
十八番と云えば
ナンパでありました。
熊本最大の歓楽街裏(うら)上通り
裏(うら)下通りで
揃えたブランドの服を着こなし
そのさらさらとした
前髪をなびかせて
さりげなく異性の懐深く
入り込む人種なのでありました。

古今東西 上方に置かれては、
裏原宿などに見られるように
この肥後の地であっても
例外ではありません。
裏(うら)と付くだけで
ちょっとお洒落な気がしている
愚かなセンスマン。
少しハスに構えた上から目線の
鼻持ちならないナンパ野郎!
なんぼのものなのでしょう…。

方や「ヤンキー」と云えば、
その様な物言い立ち振る舞いを
冷笑するかの如く
はたまたVSの構図を
明らかにするように
独自の言語を編み出し
上方の人 所謂センスマンに
対抗しておりました。

⚠️(ヤンキーが使う言葉)
*JR(旧国鉄)三角線に限る
「スッタ〜ン武者ん’よか」
「ご”ろっ武者ん’よか」
【翻訳】
「とても格好がいい」
ナンパ野郎(センスマン)は、
上記のような
言い回しを致しません。
たとえ真似をしたとしても
イントネーションが違うのです!
笑止!まがい物は所詮 偽物…。
眉唾なのであります。

裏(うら)通りなどを嫌う
我ら「ヤンキー」族は、
表通りを堂々と歩くのです。
サンロード新市街
なのであります。
そのカッチとした髪型は、
フランス航空で名を馳せた
コンコルドの如く前へ前へと
鋭くトンガっており
風になびく事などありません。
その生き様を表現する
かのように決してブレない
髪型なのであります。
そしてポマードを練り込んだ
それは、年配の大人の匂いを
彷彿させるものであり
それは正に
ひと昔前の仏映画スター
アラン・ドロン(風)の香り
なのでありました…続く。

リーゼントに感謝して
また、明日。

for you…rain season 15話「センスマン」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
店の階段を降りれば、
この大人の街 三宿にも
雨の匂いを含んだ
風が吹いていました。
それは、夏を迎えるための
長い梅雨前線の
到来でありました。

「ナンパしたことないの?」
もう一人の踊り子
2ブロックちょんまげ頭が
口火を切りました。
このepisodeには、
育って来た環境
また風土の違いを語って
置かなければなりません。
少しばかりMの話からは反れ
肥後もっこすの話に
お付き合い願います…。

昭和61年 熊本城下町。
熊本市内に進学した
男子学生達を
大きく二つに分けると
こうなります。
肥後五十二万石 加藤清正 創建
熊本城が見える距離で育った
市内弁を使う山の手の方々を
「センスマン」と云い
もう一方、城下には程遠い
山岳部 海岸地帯から
汽車やバス 渡し船など
あらゆる交通手段を使って
通う者を「ヤンキー」などと
呼んでいました。

この両者、髪型も違えば
ファッションも異なり…
何より言語が違うのです。
同じ熊本地方にあって
言語が違う?と
お思いでしょうが
それは、多感な男たちの
棲み分け手段としても
顕著に現れます。

⚠️(センスマンが使う言葉)
「〜だっちかっ」
【翻訳】
「だけど」を
山の手のセンスマンは、
「ばってん」を使わずに
高等なスタッカートを利かせて
だっちかっ”と表現して
見せます。市内弁(センスマン)の
特徴のひとつであります。

そして、
マッシュルームのような
髪型をした彼らの
十八番と云えば
ナンパでありました。
熊本最大の歓楽街
裏(うら)上通り裏(うら)下通りで
揃えたブランドの服を着こなし
そのさらさらとした
前髪をなびかせて
さりげなく
異性の懐深く入り込む
人種なのでありました…続く。

高校時代に感謝して
また、明日。

for you…rain season 14話「ダイヤルM」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そして、最大のミッション
「ダイヤルM」即ち
彼女の電話番号を聞きだす事が
果たして出来るので
ありましょうか❗️

どちらかと言えば、異性との
会話に不慣れなアフリカーナ。
親に反抗し犬以外に
心を許さなかった幼少期。
色気付いた青年期は男子校…。
全ては雄と男社会で
育って来たのです。
歩んで来た道が違うのです。

丸坊主の中学生が進級し
髪を伸ばせることに
一喜一憂した高校時代。
前髪の伸びが
遅いことに業を煮やし
フローリンと云う名の
育毛液を頭皮に
ふり掛けていたあの日…。
苦労の甲斐あってか
アイパーをあてる迄に至った
最初の髪型はリーゼントでした。
その時の歓びは
云うまでもありません。
そんな青春時代を
送って来た男に電話番号GET
なる超高度な技術
ハイセンスなスペックを
学ぶ機会も時間も
有りはしないのでした…。

だけれど、チャンスは
待ってはくれません。
ぶっつけ本番の真剣勝負!
手際の良いMのレジ捌きは
見事なものです。
僕は只々間合いを
伺っておりました。
心の中で掛け声を…
(いち にいー の~さん)
今だ!の瞬間
お釣りが手渡されました。
口が開いたの同時にMの
「有難う御座いました」に
僕の「あの 電…」は
掻き消されてしまうのです。
足早に勘定場を去る
彼女の姿を目で追う他に
術がありません。

異様な髪型軍団の面々は、
笑いながらおでこに
手をあてて「あいた〜」と
ばかりに空中を仰いでおります。
僕は振りあげた拳ならぬ
「番号教えて」を言えない
ままにそのか細い声の
落し所を探すのです。
十代で学ぶべき試練なるものを
二十代中盤で体感する
悲しきアフリカーナ。
遅すぎた思春期…。
青くて苦い失敗でありました。

大人の酒場 三宿。
店の階段を降りれば、
この街にも
雨の匂いを含んだ風が
吹いていました。
それは、夏を迎えるための
長い梅雨前線の
到来でありました…続く。

青い体験に感謝して
また、明日。