for you…spring 7話「お嬢様」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
椋の木を使った贅沢な造りの
一本カウンターは、
荒削り風に施され職人の気概を
感じさせてくれます。
手作りで作られた
指揮台のようなそれは、
奥までと伸びていて
この店の象徴で
ZESTの顔でありました。

僕は、凹型の二階席を好み
ソロで活動していた事もあり
そこで労いを込めて
手伝ってくれるメンバーと
一緒に酒を飲むのでした。
なかなかどうして…。
いつも笑顔で客に
対応するMは、僕が知らない
世界の人のようでした。
山の手の人と云うべきか…。
無垢で清楚を纏ったような
身の振る舞い、育ちの良さ…。
一言でいえば、
絵に描いたような
「お嬢様」でありました。

凹型の席に陣取る
ドレッドヘアーに三つ編み、
スキンヘッドとモヒカン
そして2ブロック
ちょんまげ頭の面々…。
一般的では無い
異様な髪型の集団。
そんな我らにも
気さくに対応してくれる
ショートカットの女子大生M。
最初の印象は、
明るくて感じのいい
お嬢さんでありました…続く。

お嬢様に感謝して
また、明日。

for you…spring 6話「三宿ZEST」後編

聞こえますか?
昨日の続き…。
うす汚れた波型のトタンは、
このお洒落な街にも
さり気なく溶け込んで
見せているのでした。

中にお邪魔すれば…
吹き抜けの大開口。
見下ろすように建てられた
凹型の二階は広く
この店内を一望出来る
場所であり吊り下げられた
スプリンクラーは優雅に
ゆっくりと廻っておりました。
階段を上った入り口の
右手にはテラス席があり
夜風を愉しむのに
もってこいの酒飲み場で
中心部の大広場のそこは、
オーケストラの楽団が演奏する
オペラ劇場のような
雰囲気すら醸し出しております。

椋の木を使った贅沢な造りの
一本カウンターは、
荒削り風に施され職人の気概を
感じさせてくれます。
手作りで作られた
指揮台のようなそれは、
奥までと伸びており
この店の象徴でありZESTの
顔でもありました…続く。

今は無き三宿ZESTに感謝して
また、明日。

for you…spring 5話「三宿ZEST」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
Mとの出会いも
そんな過渡期の話。
四つ年下の彼女との
お付き合いに至るまでの
きっかけは「コップ一杯の水」
でありました。

東京は池尻大橋。その昔、
龍池と呼ばれたその尻尾に
リハーサルスタジオが
ありました。なんちゃって
アフリカンの僕は、
そのスタジオを砦とし
稽古を終えれば決まって
その龍池の中心部
三宿のメキシコ料理店へと
足を運ぶのでした。

賑わいを見せていたZEST。
田舎育ちの僕にとって
正にそこはテーマパーク。
映画のシーンに出て来ても
可笑しくはない建物であり
ブリキで作られた外壁は、
手抜き工事と思わせる演出で…。
ザックリとビスで
撃ち抜かれたそれは
細部までしっかりと
計算された斬新なデザインで
あったのです。
うす汚れた波型のトタンは、
このお洒落な街にも
さり気なく溶け込んで
見せているのでした…続く。

三宿の酒場に感謝して
また、明日。

for you…spring 4話「アフリカーナ」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
これより先は、
少しばかり時間を戻して
Mとの出会いから
どうしても洗えない髪と
その仲間たちの
話を交えながら綴って
行きたいと思います。

若気の至りとは
良く言ったもので
少しだけ思い込みの強い僕は、
心底アフリカンにのめり込み
打楽器と歌の世界を
追求していました。
決してアフリカーナには
なれないものを…。
肥後ノ国 港町である三角は
戸馳島の出身であります。
育って来た環境や
リズムが違うのです。

田舎の友人にしたらこうです。
「わら〜何しよっとや
親が泣くぞ!東京に
魂売って染まったつや!」
【翻訳】
「身の程を知りなさい…
東京に魂売った
男など友達じゃない!
親が泣いているよ」
⬆︎こんな感じであります。
髪を洗えない
残念なアフリカーナ。
それを思い知るに至るに
暫しの時が必要でありました。

Mとの出会いも
そんな袋小路に迷い込んだ
僕の過渡期の話。
四つ年下の彼女との
お付き合いに至るまでの
きっかけは「コップ一杯の水」
でありました…続く。

その水に感謝して
また、明日。

for you…spring 3話「洗えない髪」後編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
「その髪いつ洗うの?」
三つ編みにした肩まで伸びる髪に
パステルカラーのビーズを
あしらったそれを指差し
Mが言うのです。
それは、洗ってはならない
髪型でした。

普通に洗えば
直ぐに崩れてしまいます。
頭皮だけをマッサージするように
週に一度、ないしは二度…。
痒みに打ち勝てば、人間大抵の
事には慣れるものです。
問題ありません。

以前あなたの事を書いた日記…。
顔の三倍はあろうかアフロばりのそのくるくるパーマは、
「スズメの巣ですか?」
と言いたくなる代物で、
決して風になびくことのない
その金色の髪の毛は
乾いた紙粘土のようでも
ありました…。
[畦道とハイヒール]episode1より
血は争えません。
奇抜な風貌は母親譲り。
僕はやっぱり
あなたの息子でありました。

そんな事など知る由もないM。
只々彼女には、
我慢ならないのです。
世捨人のような衣装を身に纏い
虫が棲みついても可笑しくない
ロングヘアーのうす汚れた男を
恋愛対象としてどうしても
見れないようでした。
Mは、新種の動物を見るかのように
その眼差しを向けた後
ありえない!とも言いたげな
素振りで被りを振るのでした…。

これより先は、
少しばかり時間を戻して
Mとの出会いから
どうしても洗えない髪と
その仲間たちの話を交え
綴って行きたいと思います…続く。

若かれし頃に感謝して
また、明日。

 

for you…spring 2話「洗えない髪」前編

聞こえてますか?
昨日の続き…。
「あなたはタイプじゃない」
僕はその三宿の彼女
つまりはMにこっぴどく
振られてしまうのです。
彼女とのはじまりは、
散々たるものでありました。

さらに…。
「あなたの格好が嫌!」
「何よりそんな
髪型の人とは絶対無理!」
僕だって人の子。
そこまで言わなくても…なくらい
正直でもの事をズバリと言う
女性でありました。

ただ、言われて当然な
ところも確かにあったのです。
あの当時の僕は、
打楽器音楽に傾向し
カポエラなる格闘技のダンスを
楽曲に取り入れ アフリカンに
陶酔しておりました。
それに伴い僕の姿形も
変貌を遂げるのでした。

「その髪いつ洗うの?」
三つ編みにした肩まで伸びる髪に
パステルカラーのビーズを
あしらったそれを指差し
Mが言うのです。
それは、洗ってはならない
髪型でした…続く。

あの頃に感謝して
また、明日。

for you…spring 1話「三宿のM」

 

聞こえてますか?
「あなたは嫌いじゃないけれど
きっと好きにはなれない…」
彼女の声は、言葉の玉となり
水面に零れ落ちる雨粒のように
ポトン”ポトンと僕の心に
波紋を拡げて行くのでした。
この静寂に雨音だけを響かせて…。

好きな人がいて
そしてその相手が
同じ気持ちだなんて
奇跡に近いこと…。
そう思っていました。
だけど、今をもってしても
解けない謎があります。
あの時 彼女「三宿のM」は、
何故 僕を受け入れてくれたのか?
「そして、あの人…」の存在。
この日記では、
Mとの出会いから
楽曲 for you…が出来るまでを
綴っていきたいと思います。

ここは東京。渋谷に近く
お洒落な大人の街…三宿。
歴史を遡るとその昔、
この辺りは蛇池又は
龍池と呼ばれた
水の宝庫であったとか…。
お隣りの池尻
低地部の北には池ノ上。
挟まれるような
地形にあるそこは、
水が宿る地と呼ばれ本宿 南宿 北宿
と云う地名から「水宿」が転じて
名付けられた三宿。
(Wikipedia参照)

国道246号線 玉川通り
1990年代当時三宿の交差点近くに
嘗てZESTと呼ばれた
メキシコ料理店がありました。
三宿の彼女Mとは、
そこでアルバイトをしていた
ショートカットの大学生。

「あなたはタイプじゃない」
僕はその三宿の彼女
つまりはMにこっぴどく
振られてしまうのです。
彼女とのはじまりは、
散々たるものでありました…続く。

三宿の街に感謝して
また、明日。

「春色の雪」

 

聞こえてますか?
2014年 秋 熊本
「来年のさくら見れるかな」
あなたはそう
言っていましたね…。

2018年 春 東京
あれから四回目の桜に
この気持ちを込めて…。

♪春色の雪

粉雪みたいな 花びらが舞う
吹き降ろしの風
散りゆく花は薄化粧
何だか寂しい薄紅色
あの日の 夢はまだ
消せないままで

春色の雪 花の名残り
風を集めて
わたしの愛を 連れて行って
あなたのそばに

メトロの駅から 続く坂道
人波は雪崩れ
花冷え 花酔い 黄昏
戯れの花 ひと時の夢
いつかは ひとりぼっち
分かってたのに

春色の雪 心名残り
風を集めて
わたしの愛が 空に還る
想いでをのせて

花曇りの空に舞う
わたしの 雪

春色の雪 花の名残り
風を集めて
わたしの愛を 連れて行って
あなたのそばに

春色の雪 心名残り
風を集めて
わたしの愛が 空に還る
想いでをのせて

雪 春色の雪…
雪 春色の雪…

あなたに感謝して
また、明日。

聞こえてますか?archive 「向山のボス猿」

聞こえてますか?
彼は、△(サンカク)中学
二年三組の顔でした…。
猿は、秩序ある社会構造を
作っているとされ
リーダーとなる雄は、
群れ全体を率いている。
敢えて動物に例えて云うならば、
彼は正しく 向山のボス猿でした。

今も昔も変わらず雄の社会は
厳しいもので
弱肉強食 喰うか喰われるか !
僕等にとって学校とは、
メンツを賭けた
男達の戦場でした。

クラス替えになった三組は、
山岳地帯(向山 穂刈道)を
縄張りとする彼の天下で、
向山のボス猿の名を
欲しいままにしていました。
「彼奴はおおちゃっか打つ」
【翻訳】
「彼は生意気だから締める」
まだ組に馴染めない僕は、
標的の纏でした。

そんなある日、
僕は些細な事から
隣組の転校生逸れ(ハグレ)猿と
諍いを起こしてしまいます。
解せない僕は、
逸れ猿のアジトに
カチコミをかけますが、
なれない山道で
すっかり迷ってしまいました。

「逸れ猿の家はどこですか?」
洗濯物を取り込む
女人に僕が訪ねると
恰幅のいいその腰を上げながら、
「ぎゃん行って
ぎゃん行って ぎゃん」
【翻訳】
「あの角を曲がって
山道をお行きなさい」と
気さくに教えてくれました。
的確な道案内の甲斐あって僕は、
晴れて逸れ猿との
果し合いの場へと
向う事が出来たのです。

勝敗は如何に!
男のメンツに賭けてそれは、
控えさせていただきます。
ただ云えることは、
僕らの喧嘩は「こと」が
終わればノーサイド。
何処か爽やかなものが
ありました。
そんな、時代でした…。

あくる日、僕に向かって
向山のボス猿が言うのです。
「ワリャ~昨日~喧嘩したろ~!」
【翻訳】
「君は昨日 喧嘩をしたのかい?」
恰幅のいい女人は、
ボス猿のお母さんでした。
それから僕とボス猿の、
長い付き合いが始まるのでした…〆

向山のボス猿に感謝して
また、明日。

聞こえてますか?archive 「首都高の橋桁」

聞こえてますか?
首都高速道路…。
橋桁の麓には、
その幅で造られた細長い
緑道公園が伸びていて
フットサルやテニスの素振り
子供の散歩 管楽器の練習など
様々な人達が活動しています。
僕もそのひとりで、
ジョギングの後に声を
出したりしながら
この場所を活用しています。

人の目を気にする事なく
自由に鼻歌を口遊さんでいた
学校の帰り道。
都会にもこう云う場所が
ある事に嬉しさを感じます。
箱庭の木の色と形…。
人の手で造られた池には
錦鯉が優雅に泳いでいます。

普段見過ごしていたお店の看板。
今度寄ってみようかな…。
昔ながらの喫茶店。
橋桁を吹き抜ける風に
その珈琲の香しさを
愉しみながら…。
そんなことを思って…。

穏やかな日に感謝して
また、明日。