大五郎 三話

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そんなある日のこと。
寝耳に水な事件が、
僕と大五郎の身に
降りかかるのでした。
それは、自然なものではなく
明らかに人工的な
犯罪と呼ぶべき出来事でした。
いつものように
彼と海遊びをしていると
仕事から帰った
あの男が、近づいて来ます。
僕らの親父でした…続く。

大五郎の忠義に感謝して
また、明日。

大五郎 一話

聞こえてますか?

僕たち家族は、
彼の事を大五郎と
呼んでいましたね。
落ち着きの
なかった幼少期。
手の焼ける僕を
玄関先に紐で
括っていたあなたは、
大五郎のおかげで
助かったと
後に語っていました。
新しい家族の一員と
なったシェパード犬
と共に僕らは、
成長して行きました。
時代劇のキャラクター
から名付けられた
大五郎。3才になった
ばかりの僕に、
はじめての友達が
出来ました…続く。

はじめての友達に感謝して
また、明日。

宴 ふた夢

聞こえてますか?

昨日の続き…。

その賑やかさに

あなたも夜更かしを

してしまいましたね。

「あの曲を聴かせて」

体調を崩したあなたの

声がしました。

そして、

僕の手を借りながら

病室のベッドから

起き上がります。

それから、

まだ未完成だった

「眠り」を窓の外を

眺めながらずっと

聴いていました。

♪ もう少し

ここでお休み

髪を撫でていたくて

あと少し

夜を延ばして

その顔を見ていたくて

愛に傷ついて

心を閉ざした

ひと

泣かないで

歌詞 眠り…より

歌に感謝して

また、明日。

宴 ひと夢

聞こえてますか?

「まーまーねぇ」

退院して帰って来た

あなたは、

そう

云っていましたね。

友達

親戚一同が集まる中

僕は、

「眠り」と

云う曲を歌いました。

皆、一頻り飲んで食べて

大いに笑った一夜限りの宴。

久しぶりの我が家。

その賑やかさに

あなたも夜更かしを

してしまいましたね…続く。

ひと夢に感謝して

また、明日。

向山のボス猿 四

聞こえてますか?

昨日の続き…。

恰幅の良い女人の

的確な道案内の甲斐あって

僕は晴れて、

逸れ猿との

果し合いへと向かう事が

出来たのでした。

はて、軍配は…。

それは、

男のメンツに賭けて控えます。

ただ言えるのは、

その後

逸れ猿とは将棋を指す

間柄になりました。

僕らの喧嘩は「こと」が

終わればノーサイド。

何処か爽やかなものが

ありました。

そんな時代でした。

あくる日。

僕に向かってボス猿が、

言いました。

「ワリャ~昨日喧嘩したろ~」

恰幅の良い女人は、

ボス猿のお母さんでした。

それから僕とボス猿との

長い付き合いが

始まるのでした。

向山のボス猿に感謝して

また、明日。

向山のボス猿 参

聞こえてますか?

昨日の続き…。

「奴はおおちゃっか!」

「(生意気)打つ!」

まだ組に馴染めない僕は、

標的の的でした。

そんなある日。

僕は些細な事から

隣組の逸れ(ハグレ)猿と

諍いを起こしてしまいます。

解せない僕は、

逸れ猿のアジトに

カチコミを駆けますが、

慣れない山道で、

迷ってしまいました。

「逸れ猿の家は何処ですか?」

洗濯物を取り込む

女人に訪ねると、

恰幅の良いその腰を

上げながら

「ぎゃん行って ぎゃん」

(翻訳) 「あの角を曲がって」

「ドン突き左」 と

気さくに 答えてくれました。

的確な道案内の甲斐あって

僕は晴れて、

逸れ猿との

果し合いへと向かう事が

出来たのでした…続く。

恰幅の良い女人に感謝して

また、明日。

向山のボス猿 弐

聞こえてますか?

昨日の続き…。

僕らにとって学校とは、

メンツを賭けた男達の

戦場でした。

クラス替えになった

三組は、

山岳地帯 (向山 穂刈道)を縄張り

とする彼の天下で

向山のボス猿の名を

欲しいままにしていました。

「奴はおおちゃっか!」

「(生意気)打つ!」

まだ組に馴染めない僕は、

標的の的でした…続く。

戦友に感謝して

また、明日。

向山のボス猿 壱

聞こえてますか?

彼は、

△(サンカク)中学

二年三組の顔でした。

猿は、

秩序ある社会構造を

作っているとされ

リーダーとなる雄は、

群れ全体を率いている。

敢えて動物に例えて

云うならば、

彼は正しく

向山のボス猿でした。

今も昔も変わらず

雄の社会は厳しいもので、

弱肉強食

喰うか喰われるか!

僕らにとって学校とは、

メンツを賭けた

男達の戦場でした…続く。

二年三組の戦場に感謝して

また、明日。

有明の風

聞こえてますか?

僕が育った有明海は、

毎年の台風を避けては

通れない海でした。

風が吹くと父は、

海を見に行きました。

時化た海上の船が

心配だからです。

暴風雨ともなれば

陸(おか)に船を上げて

備えます。

台風一過、

父は決まって

船底の掃除を

命じます。

大切な休日も

台無しです。

風の行方が

肝心な投網では、

その野生的な眼力で

魚の群れを捉えます。

櫓を漕ぐ僕は、

風が読めずに

しくじります。

風の日に

僕が備えていたのは、

潮の流れと

父の命令でした。

有明の風に感謝して

また、明日。

兜島 後編

聞こえてますか?

昨日の続き…。

漁師が兜島で鮫を見た!

と云う噂が流れました。

怖さに勝る探究心は、

僕らの特権で

行動を起こすには

充分な案件でした。

真相を確かめるべく

投網と鉾を携え

「いざ 鮫退治に出陣!」

と威勢良く兜島へ舵を

切った迄は良かった

のですが、

待てど暮らせど

お目当の鮫は、

出て来てはくれません。

すっかり飽きてしまった

僕らは、

いつもの

カサゴ釣りに切り替える

のですが、

これが

全く釣れません。

鮫にもカサゴにも

振られた僕らは、

坊主のまま兜島を

後にするのでした。

海の恵みに感謝して

また、明日。