渡し舟 壱

聞こえてますか?

「海に落ちた男」

中学に上がったばかりの僕は、

そう呼ばれていました。

市町村の卒業生が集まるその

学校は、宇土半島の三角と云う

港町にあります。渡し船を

利用する登下校 海に落ちたのは、

僕が初めてでした。

箱舟とも呼ばれるそれがゆっくりバック

これに乗らなければ遅刻。

大丈夫 既に助走はついている。

跳べる!直感が背中を押します。

少し大きい学生服を身に纏い

真新しい肩掛け鞄を抱え

利き足に渾身の力を込めて ジャンプ…続く。

 

失敗と経験に感謝して

また、明日。

聞こえてますか?
「イヤーサーサ」
窓を開けたら子供達の歌が
聴こえました。
運動会の練習でBEGINの島人の宝を
歌っているんですね。
ベランダに造った小さな庭から
様々な音を聴く事ができます。
小鳥の囀りや風鳴り。
遠くに走る貨物列車の車輪に
不規則に響く工事現場の機械音。
始まりと終わりを知らせる
学校のチャイム。
穏やかな一日に感謝して
また、明日。

心の窓辺 二章

聞こえてますか?
雪解けに咲く 花よ
長い冬を越えて来たの
閉ざされ窓 光なき闇の中
人が最後に願ふは 愛
いつも心の窓辺に花を
いつも君のそばに愛を
大切なもの
目には見えないもの
形なきものを 信じながら
心の花に感謝して
また、明日。

心の窓辺 一章

聞こえてますか?
何ゆえに咲く 花よ
人知れず咲いては散るの
在りし日の夢 傷つき涙しても
人がたよりに想ふは 愛
いつも心の窓辺に花を
いつも君のそばに愛を
人に感謝して
また、明日。

空と海と風

聞こえてますか?
空がすき 爽やかな風を連れてくるから
風がすき 大きな雲を動かせるから
雲がすき 形を変えやがて雨になるから
雨がすき そしてそれは海に還るから
空と海と風に感謝して
また、明日。

いつかの蕾

聞こえてますか?
いつかの蕾が緑の葉を広げて
育っています。
今年の大樹は成長が遅く、
ちゃんと葉をつけるのか心配でした。
夏に向かって頑張っている様です。
細やかなことに感謝して
また、明日。

中学の友達

聞こえてますか?
久々に同郷の友達と呑みました。
酔った彼がしにりに言っていた
「中学の友達は一生もの」
溜まり場だった家の父親が、
大人になろうとする不安定な
僕達に諭した言葉でした。
そして僕も、彼と同じ様に
その言葉を忘れた事がありません。
中学の友達に感謝して
また、明日。

熊本

聞こえてますか?
あの日から一年が過ぎました。
時は流れているけれど、
止まったままの人がいる事を
忘れないように。
僕に出来る事を考えながら…。
生かされている事に感謝して
また、明日。

その手

聞こえてますか?
いつから変わってしまったのか…。
ママからお母さん お母さんからお袋。
手を繋いでいた時 繋がなくなる時。
子供でもやっぱり男、
友達への体面を重んじます。
ある日のお買い物で僕は、
手を繋ぎ歩いている姿を
同級生に見られてしまいます。
僕は思わず、
その手を離してしまいました。
母の日に、
そんな事を思い出しながら…。
生まれたことに感謝して
また、明日。

戸馳島

聞こえてますか?
時にはvocalist時にはengineer
はたまた流離いのganbler。
そんな女性の仲間が出来ました。
カサゴのchorusも快く
引き受けてくれた彼女の声は、
とても新鮮で魅力的なものでした。
耳に心地よく引っかかり
自然体で程よく力の抜けた歌声は、
鼻唄を口遊んだあの頃を
思い出させてくれます。
天草の玄関口。
宇土半島のつま先から
ちょこっと離れた戸馳島。
その一番高い場所に小学校があり、
子供の足で片道一時間の距離。
下り坂の帰り道は、少し楽だけれど
それでも子供心に
「だぁりぃ~」そう感じていました。
そんな毎日の中で
あっちの山道こっちの砂利道と
早道を探すのですが、結局
正規ルートが一番だと
思い知らされる事になります。
諦めた僕が次に考えたのは、
遊んで帰る方法でした。
秘密の基地を造ったり
鳥捕り(バッタリ)を仕掛けたり
したけれど、長くは続きません。
クワガタやカブト虫にも飽きた頃
僕は、鼻唄の楽しさに気付きます。
雨の日のハミング
晴れの日のファルセット
台風の日のシャウト
ただ何となく口遊むだけで、
その時を豊なものにしてくれました。
僕の歌のはじまりは、
退屈な学校の帰り道でした。
島と仲間に感謝して
また、明日。