畦道とハイヒール「願い」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
そんな悩める
園での暮らしの中で
どうしても
気になる女性が
出来てしまいます。
幼稚園の先生でした。

犬の大五郎以外
興味を抱かない
僕にとって
はじめてのことでした。
いつも笑顔で優しい
彼女は、控えめな物腰に
化粧も派手なもの
ではなく
限りなくナチュラルで
爽やかなひとでした。
しかも、黒髪が
風になびいています。

それは、僕にとって
大切なことでした。
アフロばりの
スズメの巣のような
髪型のあなたとは
大違いです。
そよ風を
ものともしない
その金色の髪の色は、
針金のようで
とても不自然です。
何よりも
自然体であることが
あなたに対する密かな
僕の「願い」でした。

こんなエピソードが
ありましたね。
園の遠足で長崎の島原に
行った時のこと…続く。

遠き日に感謝して
また、明日。

畦道とハイヒール 「目に見えないもの」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
小さくてもそんな
感情が芽生えたのは
確かにあの頃でした。

あの時のことを
どう表現したら
いいのか分かりません。
だけど、
今こうして振り返って
みればそれは、
園に通う子ども達と
何ら変わることのない
「僕の甘え方 」のように
思えてなりません。

僕なりに示した
唯一の反抗であって
目には見えない
精一杯の愛情表現…
ただ、それだけのこと
だったのかも知れません。

そんな悩める
園での暮らしの中で
どうしても
気になる女性が
出来てしまいます。
幼稚園の先生でした…続く。

思い出に感謝して
また、明日。

畦道とハイヒール 「変わった子ども」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
1975年の春は、
僕の嘘から
はじまるのでした。

あなたは、僕のことを
「変わった子だね」と
よく言っていました。
僕にしたら
どっちが!です。

母親に甘えることが、
当たり前とされた
子ども達の理りの中で
確かに言われてみれば
僕の方も少し
違っているようでした。
ひらひらの服を着て
手を繋ぐことや
買い物に
付き合わされることも
とても
窮屈で苦手でした。
なんでそうなって
しまったのか…。
それは、
園に上がる前の環境に
原因があるのかも
知れません。

共働きの両親のもと
一日の殆どを僕は、
ひとりで
過ごしていました。
考えたあなたは、
僕に犬を宛てがいました。
番犬の意味合いも
あったのでしょう。
ひとりでいる事に慣れ
何よりそれが当たり前に
なっていく僕を
心配しての事だったと
今では思えます。
でもあの時の僕には
あなたの想いに
応えるすべを
持ち合わせては
いませんでした。

そんな生活の中で
唯一心を許したのは、
その共に育った
シェパード犬の
大五郎でした。
彼だけが救いでした。
異なる動物同士とはいえ
垣根をこえた関係に
言葉はいりません。
同時に強い安心感を
彼に見出してもいました。

そして僕は、
あなたに対し
子どもの特権を放棄し
代わりに無言と云う
武器を手に入れました。
「五歳のあんたが」と
思うでしょうね。
だけれど、小さくても
そんな感情が
芽生えたのは、確かに
あの頃でした…続く。

あなたの想いに感謝して
また、明日。

畦道とハイヒール 「嘘」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
五歳になった僕は、
あなたを見る
「ひとの目」ばかりを
気にしていました。

宇土半島のつま先。
三角岳をはじめとした
山々が連なる三角町。
天翔台なる山の裾野に
その幼稚園はありました。

僕はそこで更に
疑念を深めてしまいます。
皆一様に手を繋いだ
園児たちがやって来ます。
でも僕の興味は、
目下その手を引く
保護者の方でした。
そこへ来る人達は、
思い描くお母さん
そのものでした。
そして僕は、
あなたを見上げるのです。
いつにもまして
顔が光っています。
金と銀の折り紙を
散りばめたような
そのキラキラは
どこの壁にぶつけたの?
と聞きたくなるくらいです。
港町の春の日差しを
甘く見てはなりません。
照り返しが強いのです。
チカチカします。
目に毒なんです。
あなたは、そこでも
完全に浮いていましたね…。

「あれ 誰れのお母さん?」
半島に住む街の園児が
興味津々な面持ちで
尋ねて来ます。
「知らん」
僕は、直ぐにバレる嘘を
ついてしまいました。

人と違うことに
少なからず
抵抗を感じていました。
やっぱりあなたは、
この星のひとではないと
そう思い込むことで
その場を
やり過ごしていました。
1975年の春は
僕の嘘からはじまる
のでした…続く。

三角町に感謝して
また、明日。

畦道とハイヒール 「ひとの目」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
あなたの出で立ちは、
当時 お茶の間を賑わした
地球外生命体のようで
エイリアンに違いないと
子どもながらに
疑ったものでした。

1975年 春。
今日は入園式。
黄色い肩掛けポーチと
ひらひらの付いたフリルに
青いドット模様の
服を着せられて
はじめての
幼稚園に挑みます。

島にも保育園という
施設はありました。
だけどあなたは、
宇土半島にある
その園に僕を預けました。
それには、理由が
あったようですね。

車の免許を持たない両親。
島民にとって自動車は、
不可欠なものでした。
我が家では舟だけが頼り。
役所の手続きや、
日々の生活に
便利な場所を選ぶのは、
無理からぬことでした。
そんな家庭の事情も
重なり僕は、
一年間という他の子より
短い幼稚園の生活を
送ることになりました。

そんなあなたの
思いをよそに
僕は只々 恐れていました。
あなたのことです。
入園式では、きっと
張り切るでしよう…。
日に日にエスカレートする
メイク&ファッション。
五歳になった僕は、
あなたを見る
「ひとの目」ばかりを
気にしていました…続く。

あの時代に感謝して
また、明日。

畦道とハイヒール 「告白」

聞こえてますか?
昨日の続き…。
風になびくことのない
その金色の髪の毛は、
乾いた紙粘土のようでも
ありました。

シルヴィ・ヴァルタンを
好んで聴いていた
あなたは、
なんちゃってパリジェンヌ。
メイクひとつにしても
丹念に仕上げます。
何処を真似て
何を間違ったのか
何もそこまでしなくても
と云うくらい塗り重ねた
白いキャンパスに
あなたは、
ルージュを引きました。
まんが日本昔ばなしに
登場するお公家さま
のようです。

幼い頃の僕は、
そんなあなたが
少し いやでした…。

島の住民にそのような
風変わりな女性は、
ひとりもいませんでした。
TPOを完全に度外視した
あなたの出で立ちは、
当時 お茶の間を賑わした
地球外生命体
エイリアンに違いないと
子どもながらに
疑ったものでした…続く。

若かった
あなたに感謝して
また、明日。

畦道とハイヒール 「宇宙人」

聞こえてますか?
あなたは、まるで
宇宙人のようでした。

1975年 肥後ノ国。
天草の玄関口 三角港から
渡し船でゆく島。
みかん畑が連なる山々と
北に広がる有明海。
南には不知火海を臨む
その島のことを
人々は戸馳島と呼びます。
そこに住む人たちは、
長閑な自然と寄り添い
暮らしていました。

そんな島の景観に
逆行するかの如く
船着場までの畦道を
颯爽と闊歩する
ひとりの女性がいました。

今にも折れそうな
真っ赤なハイヒールの
靴を履いたあなたは、
今日も僕の手を引きながら
買い物へ出掛けます。
顔の三倍はあろうか
アフロばりの
そのくるくるパーマは、
スズメの巣ですか?と
言いたくなる代物で
決して
風になびくことのない
その金色の髪の毛は、
乾いた紙粘土のようでも
ありました…続く。

二十五歳の
あなたに感謝して
また、明日。

夏の回廊 2chorus

聞こえてますか?
この声を
あの風にのせて

時の流れが 隠し持つ光
鳶色の瞳が 金色に染まる

雑誌のカタログには
載らない世界
気流が鳴る あの空の彼方

夏の回廊
幾千の時をこえて
feel like !
手をつなごう
夢はまだ続いてる

あの夏に消えた宝物
思い出して
輝いてた 君を

夏の回廊
果てしない夢の中へ
feel like !
手をのばそう
夢はまだ終わらない
歌詞 夏の回廊より

夏の風に感謝して
また、明日。

夏の回廊 1chorus

聞こえてますか?
夏の歌
とどきますように。

風になびいた
長い黒髪
水色の午後は
日差しを集めて
何を探しているの
飾らない君
空を仰いで見る夢

かるい微熱に
頬を赤らめて
囁いた声は
少しあたたかい
流れる飛行機雲
途切れ 途切れに
光を纏う翼の彼方

夏の回廊
果てしない夢の中へ
feel like!
手をのばそう
夢はまだ終わらない
歌詞 夏の回廊より

夏の空に感謝して
また、明日。

男女7人高円寺(全10ノ最終話)

聞こえてますか?
昨日の続き…。
就職組の彼が、
同級生が集まる中で
仕事を辞めると言った
ことから始まります。

いつもひょげ倒す彼が
この時ばかりは、
深妙な面持ちで
絞り出すような声で
言いました。
空回りの男
「おら〜しごつば やむっ
どがん したっちゃー
大学出にかたん」
翻訳
(俺は仕事を辞めるよ。
このままでは、大学出身者に
どうしても勝てないよ)
空回りの男
「だけん おら〜新聞配達
してでん大学受験すっ」
翻訳
(だから俺は、新聞配達
してでも大学受験するよ)
それは、六畳一間の
高円寺のアパートで発した
彼の決意表明でした。
一瞬 静止画にノイズが
走る感覚に囚われます。
彼の決意は、到底
報われることのない
無謀なものでした。

スポンサーもなく
新聞配達の稼ぎだけで
どれだけやれるのか。
生活 試験 その後の学費
親への仕送りは…。
同級生たちは、
各々反対の声を上げます。
東京での一万円は、
熊本のそれとは
決して比例しない。
同じ通貨でも
なくなるスピードが
地方によって違うことを
僕らは、肌で感じて
いたからです。
その上 肝心要の受験勉強の
時間はどうするのか。
課題は山積み…。
再就職でさえ大変な時代に
無理もありません。
彼を思っての反対でした。
だけれど、
僕は賛成に回りました。
なぜなら、
彼が抱く東京への
コンプレックスがそこに
あるような気がしたからです。
何より、そんな生き方が
好きでした。

彼のガマダシ(頑張り)は、
他に類を見ないものでした。
怒濤のような
不安と困難の中で
いつ勉強をしているの
だろうと思うくらい
彼は働きました。
いつ寝ているのか
分からなくなるくらい
学業に励んだ彼の姿を
僕らは見ていました。

それから二年。
朝夕の新聞配達 受験勉強を
やり抜いた彼は、見事
大学に受かって見せました。
僕は、感動しました。
心から凄いと思いました。

2016年 熊本で行われた
同窓会LIVEの段取りも
彼の計らいから
はじまりました。
「空回りの男」は絶好調!
みんなを喜ばせようと
ひょげ倒します。
失笑です。愚かです。迷惑です。
相変わらず
彼のハートは強く
そして、
尊いものでした…完。

PS
花の男へ
お袋に蘭の花をありがとう。
優しい大学生へ
あの日 駆けつけてくれて
ありがとう。
りぃー子へ
7.21のLIVEに来てくれて
ありがとう。
空回りの男へ あの日
泣いてくれてありがとう。
優しい声の人と厄介な彼女は、
幸せな家庭を築いて
いると聞いています。
いつか、会える日を願い
男女7人の高円寺に感謝して
また、明日。